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671 :名無しさんなんだじぇ:2010/09/06(月) 16 06 26 ID ZbhEGYuU セイバー「どけえええええええええええええええええええええっ!」 アチャー「こうなったら奥の手だ。UBW!」 上条「あっ!?セイバーとアーチャーが消えたっ?!あれ、いつの間にかアーチャーが倒れてる…」 アチャー「セイバーには勝てなかったよ…」ガクッ 上条「固有結界の中に引きづり込んでも瞬殺かよ!っていうか、どうするんですかぁ、あいつ!」 ヒイロ「ターゲット、ロックオン。状況開始」 ビシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ 上条「おぉっとぉ!?殺す気かっ!」 ゴースト「しかし相変わらずGNバスターランチャーは強力無比ですね」 オーナー「まだよ、この程度じゃ騎士王は止められないわ。ガンダムバカ、状況を開始して」 ガンダムバカ「了解。GNキャノン発射する」 バシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ 部長「うわぁ…GNシリーズのクロスファイア…。えっげつないわねぇ」 幸村「それがし達の出番はなさそうでござるな」 筆頭「そうでもなさそうだぜ。Look!」 セイバー「SHIROOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」 ヒイロ・刹那「!」 ジュッ ゴースト「ザ・自爆、ガンダムバカ、両名からの反応消失…」 オーナー「エクスカリバー同時射撃…それは予想してなかったわ…」 フナちゃん「ど、どないするんや、あんなの?!」 オーナー「ホンダムはどう?」 ゴースト「魔改造を快く受け入れてくれました。…でも良かったのですか」 オーナー「戦国最強ならば強くなる事になんのためらいがありましょうか」 ゴースト「それでも…太陽炉をそのまま移植だなんて…」 筆頭「で?策はあるのかい、竹井」 部長「んー、データによるとセイバーは初見の相手に後れを取る事が多いのよね」 小十郎「なるほど」 幸村「そういうことならば、拙者たちは全て初見のはず!渡り合えるでござるな!」 部長「あくまでデータよ?それに闘いに関しては貴方達の方が経験あるでしょ?」 筆頭「なに、方向性を示してくれるだけでも十分だ。それに、結局は俺達で突撃だろう?OK、なら予定通りだぜ」 ヴァン『しっかり捕まってろよ、かなり飛ばすぜ?』 一同「応!」 筆頭「Let s Party!」 【ダンにしがみついた政宗、小十郎、幸村、セイバーに強襲】 672 :名無しさんなんだじぇ:2010/09/06(月) 16 25 05 ID ZbhEGYuU 部長「さて、と。私たちもこそこそ行きましょうか」 アーニャ「何故、一緒に?」 部長「だってあの人たちの戦いに巻き込まれたら大変そうだもの」 海原「僕たちは遊撃隊ってことですか」 部長「火力的には心もとないけどね。行くわよ」 673 :名無しさんなんだじぇ:2010/09/06(月) 16 59 33 ID G6cmny4k 幸村「でりゃああああああああああ!!」 セイバー「!」 ガキイイィン 幸村「水泳大会とやらで暇をもてあましていた分、思う存分力を発揮させてもらうでござる!」 セイバー「邪魔を、するなと、言っているううううううううううううう!!」 ギンッ 幸村「むぅ!何という腕力!これがせいばぁ殿の本気でござるか。ここは距離を取って――」 セイバー「――エクス…」 幸村「なっ!?しまった!それを忘れていたでござる!」 筆頭「Hey!なにやってんだ!」 小十郎「駄目だ…あれは避けられん!」 セイバー「カリb――!!」 ズガガガガガガ!! 幸村「何事!?大地がえぐれたでござる!」 律「ふぅ…何とか中断できたみたいだな」 小十郎「おぉ律殿!かたじけない、危ないところだった」 律「えへへ…こういうときに力になれるよう鍛えてたんですからね。せめて役に立たないと」 キャスター「それにしても我を忘れたセイバーの破壊力はデタラメね。…防御結界を張るわ。律ちゃん、援護頼むわよ」 律「わかりました」ガシャッ 筆頭「攻撃は俺たちに任せな!」 674 :名無しさんなんだじぇ:2010/09/06(月) 22 20 06 ID OvAaOFkg 利根川「騒がしいな」 玄霧「なんでも暴走したセイバーさんと死者スレの武闘派メンバーが戦っているそうですから」 利根川「ふん、またか。騎士王だかなんだか知らんが落ち着きのない連中だ。……まぁいい。一杯付き合え」 玄霧「はい、よろこんで」 675 :名無しさんなんだじぇ:2010/09/06(月) 22 40 27 ID yg/MwJsQ 撫子「ねえねえ、幹也お兄ちゃん」 黒桐「ん、なんだい撫子ちゃん」 撫子「なんでセイバーさんが士郎さんに会っちゃいけないの? 他の仮投下中の時は控え室に待機している人に親しい人が会っていたのに」 黒桐「それはね……なんでだろう?」 676 :名無しさんなんだじぇ:2010/09/06(月) 23 04 11 ID v6uhje1s とーか「あんな我を忘れた状態で会わせるのは危険だからじゃないですの?」 カイジ「万が一破棄ということになったとして現世帰りすることになったら、無理矢理引き留めそうだよな…」 677 :名無しさんなんだじぇ:2010/09/06(月) 23 09 46 ID OvAaOFkg リボンズ「それはね、そっちの方が面白そうだからさ」 ディート「誤解を招かないよう言い直せば、『あんな状態のセイバーが控え室に入ったら部屋ごと吹っ飛びかねない』というところですか」 撫子「幹也お兄ちゃん、このおじさんたち誰?」 黒桐「撫子ちゃん、知らないおじさんと喋っちゃだめだよ」 撫子「あっ……ごめんなさい」 黒桐「次からは気を付けるんだよ。さ、部屋まで戻ろうか。ここも危なそうだし」 撫子「うん」 知らないおじさん二人「……………………」 ディート「我々も戻りましょうか」 リボンズ「……そうだな」 678 :名無しさんなんだじぇ:2010/09/06(月) 23 14 43 ID KJubXNkE カイジ「ぷっ、知らないおじさんかw」 とーか「くすくすっ、これが空気というものですわw」 679 :名無しさんなんだじぇ:2010/09/06(月) 23 41 25 ID Vd/e3nGg カイジ「見境無い今なら逆に安心だが‥‥アイツ、身を隠さないでいいのか?」 とーか「恋人の罪はすべて受けるつもりなんでしょうね」 カイジ「それにしちゃお気楽そうに見えるが‥‥」 680 :名無しさんなんだじぇ:2010/09/06(月) 23 43 38 ID gYcoSPIM イリヤ「タイガーがいれば道場ができたのに……悔しい…!」 士郎「…なぜか寒気が」 682 :名無しさんなんだじぇ:2010/09/07(火) 00 40 17 ID Ii2V6aUU 幸村「なかなかやるでござるな!騎士王殿!」 小十郎「三人がかりでかかっているというのに、未だ実力の底が見えぬとは…」 筆頭「Hey、せいばー!楽しんでるかい?!」 セイバー「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 律「こちらも援護射撃してるというのに、なかなかチャンスが出来無いな…」 キャスター「最優のサーヴァントだもの。しょうがないわ、りっちゃん」 律「に、してもムギも来てるだろうに、なんで手出ししないんだ?! いくら澪が不甲斐ないからってお前まで腐る事はないだろ!」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 幸村「なんでござるか、この地鳴りは?!」 小十郎「地震…?!」 筆頭「いや、違うぜ…変わり果てちまったなぁ、戦国最強…」 GNホンダム「………!!」 オーナー「到着したようね。調整は大丈夫かしら」 ゴースト「黒服Aさんとハロ達の通信によれば問題ない、と」 ホチキス「どうかしら?どう見ても暴走寸前と言うように見えるけど」 ふなちゃん「ヤブヘビやな、こりゃ」 みっちー「おーなー殿!アレと死合いしてもよろしいでしょうかぁ?!あのような気狂いの女なぞよりよっぽど楽しめそうです!」 オーナー「"まだ"よ」 681 :名無しさんなんだじぇ:2010/09/07(火) 00 32 52 ID viAB/x6I セイバー「ええいっ!邪魔をするな!」 幸村「せいばぁ殿が距離を取ったでござる!」 筆頭「またExcaliburを放つつもりか?!」 小十郎「律殿、警戒してください!」 律「了解!」カチャッ セイバー「風王鉄槌!」 一同「うわぁーーーーーーーー!!!」 ホチキス「あら、あっけなく吹き飛ばされたわね」 オーナー「彼らならもう少し抑えてくれると思っていたのですが」 ヴァン「ああっクソッ!!こんなメンデェことはサッサと終わらせてやる!!」 海原「あれ、ヴァンさんしかいない…」 アーニャ「あいつら役立たず」 部長「でも、ダンならセイバーを多少強引に抑えつける事が出来るわ」 セイバー「っく、危なかった。しかし、遅い!エクスカリバー!!!」 部長「……消えちゃった」 アーニャ「あいつも役立たず」 海原「……僕達だけじゃ止められませんよ」
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兄妹 ~或いは、爆弾とボンバーマン~ ◆MQZCGutBfo ―――不安に苛まれている少女を余所に、機械的な女性の声で駅構内にアナウンスが流れる。 『長らくお待たせ致しました。 本日16:00より一部の区間を除き、電車の運行を再開致します。 詳しくは構内設置の情報端末を御覧下さい。』 「ほう……」 付近に偵察に出していたラジコンを戻し、ユーフェミアの元へ戻るゼクス。 □ ゼクスが戻ってきた気配を感じ、顔を上げて無理に笑顔を作る。 「……ゼクスさん」 「聞いての通りだ。内容を確認しに行こうか。」 「え、ええ……」 安心させるように宥める口調でユフィを促す。 ―――情報端末は構内の待合室内に設置されており、 パネルを操作すると、詳細情報が表示された。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 現在、【D-6】駅付近の復旧作業中です。 【E-2】付近の修復を完了しました。 【C-6】に「死者の眠る場所前駅」の仮設を完了しました。 【B-4】駅~【C-6】駅間 【F-5】駅~【D-2】駅間 16 00より、上記2区間での往復運行を実施します。 【C-6】~【F-5】の区間は、他の交通機関をご利用下さい。 全路線の復旧に時間がかかっておりますことを、お詫びいたします。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「……【F-3】駅までは行けぬか。 直線距離では却って遠くなってしまうが、【死者の眠る場所】に近いのなら、 そこで移動手段を調達すれば良いかと考えるが……ユフィはどう思うかね?」 出会ってから常に優しく問いかけるゼクスに、優しい兄達を重ねる。 常に兄弟のことを思い、慈しんでくれるシュナイゼル兄様。 ルルーシュが眠っている国は静かにしてやりたいと、 自ら治安の悪いエリア11 ―『日本』― の統治を志願し、帰ってこなかった優しいクロヴィス兄様。 ……そして、そのルルーシュ。 ゼクスからは、その兄達と共通するモノを感じる。ので、聞いてみる。 「はい、それで良いと思います。 …………えっと、つかぬことを聞いちゃいますけど……もしかしてゼクスさん、妹さんがいらっしゃいますか?」 上目づかいでそんなコトを言う。 「……何故、そんなことを聞くんだね?」 「だって、妹に語りかけるような口調なんですもの。兄さま達と同じように。」 「………………」 絶句する。 ユーフェミアに妹の姿を重ね見ていたことを、あっさりと看破されたのか、と。 (やれやれ……別に隠すつもりでは無かったが……) いくら仮面を付けていても、ノインやトレーズにはあっさり看破されていた自身の演技力の無さに、少々嘆く。 「…………ああ、私にも妹がいる。」 「ふふ、やっぱり。当たっていましたね。 ――――――その方は、日本人の血縁ではありませんか?」 紅い瞳で問いかけられるが、段々その突如の変化にも慣れてきていた。 「いや、違う。……それに、もう生きては、いない。」 「そうでしたか……残念です。 ――――――えっと、私、また」 「会話の最中に呆けるとは、レディとしてエレガントではないな。」 かつての友のフレーズを微笑と共に流用し、その場を煙に巻く。 「あっ!その、ごめんなさい……」 顔を赤くしたユフィに微笑みつつ 「さて、それでは電車に乗ろうか、レディ」 「もぅ、ゼクスさんたら!」 空元気ではあろうが、それでも沈んでいるよりはマシと、ユフィを促し待合室を出る。 先程まで居た『丸い球体が乗った機械達』は撤収しており、車両は既にドアを開いて待機状態となっていた。 機敏さと気品さとを兼ね備えた少女が、早速車両に乗り込んでは、きょろきょろと辺りを見回している。 ドア上部にあるパネルによる経路図や、吊り広告に書かれているピザの宣伝文句やらを物珍しそうに見ていく。 「……どうかしたかな?」 「はぁ、あの……私、実は電車って初めてで。こんな時に不謹慎だとは思うんですけど。」 「……そうか。」 自身も、サンク・キングダムの王子であった身。 復讐の為に身を隠して士官学校へ入ったが、そんなことが無ければ電車に乗る機会も無かったであろう。 ―――ユーフェミアに関して、初めの印象は楚々としていて、高貴さを持ったお淑やかな女性かと思ったが、 これは意外と、内面は好奇心旺盛で行動的な娘なのかも知れない。 さぞ周りの人間は好意を持ちながらも振り回されてもいたことだろう。 そうこうしているうちに、二両編成の小さな電車の発車ベルが鳴る。 自動的にドアが閉まり、電車がゆっくりと動き出す。 ―――車内を一通り見て回ったユフィが、ちょこんとロングシートに座る。 「ね、ゼクスさん。ちょっとお腹が空きません?」 「……ああ、そうだな。」 食事を取れるときに取っておくのは鉄則である。こんな安全な状況を確保できない場合は特に。 先程持ち物を確認した際に出てきたお寿司を、両者の間に置く。 余程お腹が空いていたのか、上品にではあるが、パクパクと口に入れていく。 「……もぅ、ゼクスさん。『レディ』の食事中をジロジロ見るなんて、マナー違反ですよ。」 さっきのお返しとばかりに、くすっとゼクスに笑いかける。 「……ああ、すまない。」 「ふふふ、まあ気にしませんけど。」 なんとなく穏やかな空気の中、一つの特上寿司を二人で平らげる。 「この料理は美味しかったですね。―――でも、これは日本」 「……そろそろ、トンネルを抜けるぞ。」 ユフィの発作を遮り、外に注意を向けさせ、寿司桶を片付ける。 ―――トンネルを抜け、左手には海が、右手には夕日が見える。 (グラハム・エーカー達は無事であろうか。) 自身が囮となることで別れた、深く語り合えば戦友となれそうだった軍人を思い描く。 そして、互いを支え合っているように見えた少年と少女にも。 だが、この位置からではギャンブル船を確認することは出来そうにない。 「ほら、見て下さいゼクスさん。夕日があんなに綺麗。」 「……ああ、そうだな。」 西の山へ落ちて行く夕日へ視線を転じ、相槌を打つ。 この地に来て16時間。 『異世界』であってもこうして食事を取り、夕日に心を動かされる、『ヒト』の順応性にはやはり驚かされる。 「……戦わなければ、戦いの愚かさはわからぬ……か、良く言ったものだ。」 自嘲する。 リリーナやこのユーフェミアのような、平和を目指す少女をも、戦火に巻き込もうとしたのだ。 強制的に殺し合いをさせる帝愛と、一体何が変わらないのか。 崇高な理念、後世の為の犠牲。 『殺される』方の立場は堪ったものではないだろう。 そんなゼクスの肩に、こつん、とあたるものがある。 「眠った……か。」 こんな極限状態で、心を休ませる時など無かったのであろう。 悔いることはいつでもできる。 今はその信頼に、火消しの風として応えねばなるまい。 □ 仮設【C-6】駅が近づいてきたとの車内アナウンスが流れた為、ユーフェミアを揺り起す。 「ユフィ、もうすぐ到着だ。」 「……もう朝なんですか?」 むにゃむにゃとグズる子供のようにひとしきり嫌がってから、ハッと覚醒する。 「あ!すみません、私ったら……!」 「いや、気にしなくていい。疲れている時に休息は必要だ。……それよりも、そろそろ到着するぞ。」 立ち上がり、念のため奇襲に備えて「H K MARK23」を懐に忍ばせる。 周囲を十分に確認した出発時と違い、出口では張られている可能性もある。 「私が外を確認する。ユフィは良いと言うまで伏せていてくれ。」 「はい、お任せします。」 電車が停止し、ゼクスが辺りを用心しながら外に出る。 前方、左右、上空、後方。 ―――どうやら、人の気配はないようだ。 「出てきていいぞ、ユフィ。」 「はい……ありがとうございます。」 折り返し運転のアナウンスが流れる中、周辺を確認する。 簡素なホームと改札口があるだけの駅で、『丸い球体が乗った機械達』が必死に何かを作業している。 「あ、あの機械は譲って頂けないんでしょうか?」 ユフィが指差したのは、無骨なブルドーザー。 冗談なのか本気なのか判断しかねたゼクスは、真面目に答える。 「いや……あれでは速度的にせいぜい時速10Kmが限界だろう。歩くよりはマシだが…… それに座席がオープンで、簡単に狙撃されてしまう。 そもそも、恐らく私達が奪っても動かせないようになっているだろう。」 「そうですか……ちょっとかっこいいかなって思ったんですが。」 ―――本気の方で正解だった。 ブルドーザーを乗りこなすこの可憐な少女を想像し、貧相なユーモアセンスを刺激する。 が、外面上は仮面の如く真面目な顔を維持する。 「あ!ゼクスさん今笑いましたね、笑ったでしょう。 こう見えても、マリアンヌさまやコーネリア姉さまに憧れて、KMFの操縦は練習しているんですからね。 普通の人よりは操縦、上手いんですから。」 「ああ……すまなかった。」 やはり演技が下手なのかと、なんとなく自己嫌悪に陥りつつも、仮設駅を後にする。 □ ―――【死者の眠る場所】。 墓石や卒塔婆が並んでおり、奥の方には小さな供養寺がある。 「意味のありそうな名前の場所だったが……特別な土地、という訳では無さそうだな。」 どちらも魔力等を感知できるわけもなく、見た目だけではただの墓地に見える。 「自動販売機というのは、どこにあるんでしょう?」 「おそらく、あの正面の寺だろう。」 他に建物は見当たらず、二人で寺に近づいていく。 「あ!あれですね!」 「……ああ、どうやらそのようだ。」 本堂内に入る階段の両脇に、首輪回収機と自動販売機がそれぞれ置かれている。 ―――既にペリカが十分にある以上、首輪を回収させてやる義理はない。 「何が売っているんでしょうね?」 ユフィがコンソールを操作し、売り物一覧を確認する。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ピザ(ピザハット) :1000ペリカ 拳銃 (コルト・パイソン) : 700万ペリカ 日本刀(打刀) : 800万ペリカ サブマシンガン(グリースガン):1600万ペリカ マシンガン(MG3):2000万ペリカ 対戦車擲弾発射器(パンツァーファウスト):2500万ペリカ 自転車: 500万ペリカ バイク:2000万ペリカ 乗用車:3000万ペリカ トレーラー:5500万ペリカ 花束 : 500ペリカ 柄杓 : 500ペリカ 手桶 :1000ペリカ 箒 :1000ペリカ 線香(マッチ付き) : 1000ペリカ ※時間経過で商品は増えていきます。 ※各地の販売機によって、商品は多少変更されます。 ※当施設には特別サービスがございます。 詳しくは、下のボタンを押してください。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― (エアリーズとは言わないが、せめてヘリでもあれば、と思ったが…… まあ、車が買えるだけ僥倖と言うべきか。) 些か失望しながらも、商品を物色する。 (ここでパンツァーファウストなども手に入れておけば、リーオー辺りが出て来ても対抗手段となるが…… 私がもし途上で死んだ場合、そのままこの少女の脅威度が上がってしまう。……武器の類は諦めるべきか。) 「花束にひしゃく、ておけ……これって、日」 「ふむ……移動手段のものが4つもあるな」 被せるように注意をそちらに向けさせる。 「ええ、どれがいいでしょう?」 「トレーラーがあれば、そのナイトメアフレーム、と言ったか。 小型サイズの人型兵器を修繕できる可能性があるか……」 「移動だけでしたら、乗用車でも大丈夫そうですね。お値段もお手頃ですし。」 「……そうだな、ペリカにも限りがある。ここは乗用車にしようか。」 「ええ、異存ありませんよ。」 ペリカを1500万ずつ入れ、中からキーが放出される。 「あら?キーだけ?」 小首を傾げるユーフェミア。 「……どうやら、ここの入口に現れたらしい。」 振り返ると、何か物体が墓地入口に出現している。 「どういう原理なんでしょう?」 「さて……私達をここに飛ばした方法と一緒なのであろうが……」 やはり魔法、という力のなせる技なのか。 考えても答えは出そうになく、買い物を続けることにする。 他に食糧はいくら合っても良いとのことで、ピザを10個ずつ購入。 「後は……この特別サービスって言うのはなんでしょう?」 ポチっとボタンを押すと画面が切り替わる。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 【死者の眠る場所】での特別サービスは、『断末魔サービス』です。 亡くなった方の最期の言葉を聴くことができます。 ショートバージョン:10万ペリカ ミドルバージョン:30万ペリカ ロングバージョン:50万ペリカ ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ぴくん、とユーフェミアの動きが停止する。 「あ、あの……!」 「……ああ、構わないよ。」 知らない内に死んでしまったという、【アーニャ・アールストレイム】の最期を知りたいのだろう。 指を震わせながら『ロングバージョン』を選択し、 選択リストから【アーニャ・アールストレイム】を選択する。 50万ペリカを入れると、備え付けのスピーカーから声が聴こえてくる。 ========================================= 「ふふ、やっと着いたわ」 「これは…!?ギアスの力…なの!?」 「―――え!?」 ========================================= 「ギアスの……力……?」 「……聴いた覚えはあるかね?」 「いえ……ありません。いえ、無い…と思います。」 (ギアス……ユフィと同じ世界の住人がその単語を使ったということは……その世界における『魔法』のようなものか?) 一方通行から聞いた『超能力』 衛宮士郎から聞いた『魔術』 それらと同じように『ギアス』という物もまた、異能の力なのだろうか。 (判断するには情報が少なすぎるか……だが、何らかの鍵となるワードではあろう。) 「アーニャ……」 自らを守ってくれた女性騎士に対し、背筋を正し、黙祷を捧げる。 そして、それに倣う仮初めの騎士。 「さて……そろそろ出発しようか。」 「ゼクスさんは、良いのですか?」 一瞬目を閉じ考える。 ―――リリーナならば、聞かずとも分かる。 最期まで強情に、争いを止めようとしたのだろうということが――― 「ああ……構わない。」 墓地の入口まで歩きながら、今後の方針について話す。 「西の方まで行きたいのだが、その前に寄りたいところなどはあるかね。」 (象の像には行きたいところだが……このままの状態では、発症してしまうだけだろう……) ゼクスの方針としては、象の像を目指しつつ、ユーフェミア洗脳の解決策を探すことである。 「あ……あの!【政庁】に寄ってもらえませんか?」 「【政庁】に?……何か、存念でもあるのかな?」 「はい、もしかしたら、私の知っている場所かも知れません。 もしそうなら、通信施設もあるはずですから、ゼロが偽物だってことを、みなさんに伝えられるかも知れません!!」 (彼女の知っている場所なら、彼女の騎士である枢木スザクや、ルルーシュなる人物に会える可能性もあるか……) 現状を打破する方策が無い以上、それに賭けてみるのが良いと判断を下す。 「分かった、まず【政庁】に向かおう。」 「はい、ありがとうございます!」 元気そうに言うユフィと、微笑むゼクス。 ……………… ………… …… 「………………………………………………………」 「まあ!これは!!」 ―――ゴージャスなボディ、ラヴリーなエンジン。 緑色と桃色で描かれたボディと、前面のライトを唇に模したオシャレなフォルム。 前に4輪、後に2輪、一流の腕利きによって支えられたエンジンに追われれば、どんな奴でも逃げられる奴はいない。 今日から貴方は愛の囚われ人。 「…………トレーラーに、するべきだったか…………」 「ええ!?可愛くていいと思います。あ、でも」 ユフィは小悪魔っぽく微笑んで 『座席がオープンで、簡単に狙撃されてしまいますね。』 ―――なんだか楽しそうに、仕返しをしていた。 【C-6/死者の眠る場所付近/一日目/夕方】 【ゼクス・マーキス@新機動戦記ガンダムW】 [状態]:健康、真・新たな決意 [服装]:軍服 [装備]:H K MARK23 ソーコムピストル(自動拳銃/弾数12/12発/予備12x1発)@現実、ラブ・デラックス@ガン×ソード [道具]:基本支給品一式 、ペリカの札束 、3499万ペリカ、おもちゃの双眼鏡@現地調達 真田幸村の槍×2、H K MP5K(SMG/40/40発/予備40x3発)@現実 その他デパートで得た使えそうな物@現地調達、ピザ×10@現実 Draganflyer X6(残りバッテリー・10分ほど)@現実、Draganflyer X6の予備バッテリー×4@現実、利根川幸雄の首輪 [思考] 0:ユーフェミアと共に【政庁】に行く。しかしこの車は……。 1:ユーフェミアの洗脳を解く方法を探す。 2:国の皇女、か…… 3:『枢木スザク』と会うまでユーフェミアを守る。スザクならユーフェミアの洗脳を解けられる? 4:衛宮士郎が解析した首輪の情報を技術者、またはガンダム・パイロットへ伝える。 5:新たな協力者を探す。どんな相手でも(襲ってこないのなら)あえてこちらの情報開示を行う。 6:第三回放送の前後に『E-3 象の像』にて、一度信頼出来る人間同士で集まる 7:集団の上に立つのに相応しい人物を探す。 8:【敵のアジト】へ向かった2人組が気になる。 9:『ギアス』とは……? [備考] ※学園都市、および能力者について情報を得ました。 ※MSが支給されている可能性を考えています。 ※主催者が飛行船を飛ばしていることを知りました。 ※知り合いに関する情報を政宗、神原、プリシラと交換済み。 ※悪人が集まる可能性も承知の上で情報開示を続けるようです。 ※サーシェスには特に深い関心をしめしていません(リリーナの死で平静を保とうと集中していたため)。 ※ライダーと黒服の少女(藤乃)をゲーム乗った特殊な能力者で、なおかつ手を組んでいると推測しています。 ※ギャンブル船で会議が開かれ、参加者を探索していることを知りました。 ※グラハムから以下の考察を聞きました。 ・帝愛の裏には、黒幕として魔法の売り手がいる。そして、黒幕には何か殺し合いを開きたい理由があった。 ※衛宮士郎の【解析魔術】により、首輪の詳細情報(魔術的見地)を入手しました。 上記単体の情報では首輪の解除は不可能です。 ※ユーフェミアと情報交換をしましたが、船組のことは伝えていません。 ※ユーフェミアは魔術・超能力その他の手段で思考を歪められてる可能性に思い当たりました。 ※海原光貴(加治木ゆみ)、荒耶宗蓮(蒼崎橙子)の容姿は確認できていません。 ※アーニャの最期の言葉を聴き、『ギアス』の単語を知りました。 【ユーフェミア・リ・ブリタニア@コードギアス 反逆のルルーシュR2】 [状態]:健康 精神的不安 [服装]:さわ子のスーツ@けいおん! [装備]: [道具]:基本支給品×4、豪華なドレス、アゾット剣@Fate/stay night、神原のブルマ@化物語、 ティーセット@けいおん!、特上寿司×20@現実 、空のワインボトル×4@現実、ピザ×10@現実 ルイスの薬剤@機動戦士ガンダムOO、 シャトー・シュヴァル・ブラン 1947 (1500ml)×26@現実 紬のキーボード@けいおん! ペリカード(3000万ペリカ)@その他、3449万ペリカ@その他、シグザウアーP226(16/15+1/予備弾倉×3)@現実 レイのレシーバー@ガン×ソード、脇差@現実、即席の槍(モップの柄にガムテープで包丁を取りつけた物) [思考] 基本:他の参加者と力を合わせ、この悪夢から脱出する。自分にできる事をする 特殊:日本人らしき人間を発見し、日本人である確証が取れた場合、その相手を殺害する 0:ゼクスと共に【政庁】に行く。 1:スザク……私は…… 2:偽ゼロの存在を全参加者に知らせる 3:政庁で放送施設や通信施設を探し、全参加者に呼びかける 4:殺し合いには絶対に乗らない 5:ゼクスさんは兄様っぽい [備考] ※一期22話「血染めのユフィ」の虐殺開始前から参戦。 ※ギアス『日本人を殺せ』継続中。特殊条件を満たした場合、ユフィ自身の価値観・記憶をねじ曲げ発動する。 現在は弱体化しているため、ある程度の意識レベルで抵抗すれば解除可能。 今後も発動中に他の発動しているギアスと接近すれば弱体化、あるいは相殺されます。時間経過により回復。 会場において外部で掛けられたギアスの厳密な効果・持続期間に影響が出ているかは不明。 ※ギアスの作用により、ヒイロのことは忘れています。 ※ゼクスと情報交換をしましたが、船組のことは伝えられていません。 ※ギアス発動時の記憶の欠落を認識しました。発動時の記憶、ギアスそのものには気付いていません。 ※アーニャの最期の言葉を聴き、『ギアス』の単語を知りました。 【ラブ・デラックス@ガン×ソード】 港街ハーバー・パレードに住むバカップル、クラットとバニー愛用のヨロイ(自称) ゴージャスなボディ、ラヴリーなエンジン。はっきりいって逃げられた奴はいない。 ヨロイといいつつ、タダの自動車である。 尚、後部に付属されている飛行機能はオミットされている。 電車の運行について 【D-6】駅付近の損壊が酷い為、【C-6】に仮設駅を設置し、 【B-4】駅~【C-6】駅間、【F-5】駅~【D-2】駅間 の上記2区間での往復運行が16 00より再開されました。 全路線復旧終了時刻については未定です。 【死者の眠る場所】での『断末魔サービス』について 死亡した人間の最期の言葉を聴くことができます。 対象の人間は放送時に更新されます。 ショートバージョン:10万ペリカ(最期の一言) ミドルバージョン:30万ペリカ(最期の二言) ロングバージョン:50万ペリカ(最期の三言) 時系列順で読む Back Paradox Spiral(後編) Next 六爪流(前編) 投下順で読む Back Paradox Spiral(後編) Next GEASS;HEAD(前章) 200 亡国覚醒カタルシス ユーフェミア・リ・ブリタニア 214 Oblivion Recorder 200 亡国覚醒カタルシス ゼクス・マーキス 214 Oblivion Recorder
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See visionS / Fragments 5 『クライ』 -グラハム・エーカー- ◆ANI3oprwOY 男は失意の底にいた。 暗い穴の最奥で一人、蹲っていた。 ここは滅びた町の一角。 男の傍に壁はなく、頭上には灰色の空が広がっている。 しかしそこは紛れもなく底であり、暗闇の中だった。 少なくとも、男にとってはそうだった。 「…………」 男、グラハム・エーカーは暗い暗いその場所で止まっている。 希望を失くし、目からは輝きが消え、何も見えていない。 滅びた町も、ひび割れた地も、曇天の空も、服を濡らす雨の雫も。 何も認識していない。 虚空を眺め、制止する。 それが彼の現在だった。 「……………」 戦意が潰れている。 剣が折られている。 炎が、消えている。 「…………天江……」 呟く名は、守るべき者は、もういない。 残された残骸を握り締める事しか、許されない。 真っ赤に濡れたカチューシャ。 それはかつて守ると誓った命が染みこんだ、ただの残骸にすぎなかった。 「…………衣……」 呟くその名に、今は何の意志も込められていなかった。 まだ在った頃に、真摯に思った優しさは無い。 喪失の瞬間、張り裂けた悲哀すら無い。 なにも、何もない。 「…………」 失った後には、ただ虚空だけがあった。 空虚だけを、噛み締めていた。 故に、ここには何もなかった。 グラハム・エーカーはなにも見ていない。 暗い、暗い、穴の底にいた。 ◆ ◆ ◆ See visionS / Fragments 5 『クライ』 -グラハム・エーカー- ◆ ◆ ◆ 「…………誰だ」 かさり、と。 そのとき、穴の底に、小さく足音が響いた。 グラハムは、機械的にそれに問う。 何も見えない目前、気配がある。 背の低い小柄な体躯の、グラハムの守りたかった少女にどこか近しい。 「シスター、か」 少女だった。 インデックスと呼ばれた端末。 それが、失意の男の前に立つモノだった。 「何用……かな。今更、私に出来ることなど何もないが」 感情の篭らない、脱力した声でグラハムは聞く。 何もかもが億劫という様相を、既に隠し繕う気力もない。 「観察です。あなたの、正確には生存者の、記録を実行しています」 口を開いた少女から感情は読み取れなかった。 だからグラハムも、 「そうか」 とだけ、言った。 「…………」 「…………」 「…………」 「…………」 二人、何も言わない。 黙したままで、そこに留まり続ける。 瓦礫と砂利の丘に背を付けて座るグラハム。 崩落した町を背景に直立するインデックス。 両者、黙したまま、静かな時だけが流れていく。 二人、意志はなく。 二人、虚無を見つめ。 二人、何かをなくしたもの同士。 そういう意味で、彼らは非常に似通っているのかもしれない。 「君は……」 果たして、どれ位の沈黙が過ぎ去っただろうか。 永遠に続くかと思われた黙祷のようなそれを終わらせたのは、グラハムだった。 だがやはり何も見ぬままに、ただの気まぐれのように、彼は口を開いたに過ぎず。 「君は何故、ここにいる。ここでそんな、無駄なことをしているんだ」 証拠に、洩れだした言葉はあまりにも弱弱しい。 回答を求めない故に、言葉尻に疑問符すらつかない。 この男の常を知っているものにしてみれば、別人と疑うほどの脆弱だった。 「こんな私を見て、なんになるという」 滲む物は諦観一色。 「無駄なことだぞ」 「では逆に――」 その一色に、一石を投じるでなく、切り裂くでなく、端末は訥々と話す。 同じく脆弱な存在のまま、意志もなく、意義も無く。 それは空回り続けていた。 「あなたは何故、そこに留まるのですか」 お互いに、疑問符のつかない会話を展開する。 語尾を上げる力すら、両者にはなく、両者ともに返答を望まない。 けれど端末は、それを続けた。 「――データ参照。 グラハム・エーカーの行動パターンと性格特性(メンタルレベル)を二重に分析。 その重複結果。 あなたはここで脱落(リアイア)する行動方式を有してはおりません」 一切の感情が篭らない声。 断じて、信じていると言っている訳でも、勇気づけている訳でもありえない。 ただそうであると、断じているに過ぎなかった。 「シナリオパターンCを出展とする。 天江衣の死はグラハム・エーカーに対して極大の衝撃、ダメージとなります。それは事実。 しかしそれは、それまでのこと、あなたの心を折るには至らない」 絶対の計算式から導き出した答え。 『グラハム・エーカーはここで折れない』 もう一度立ち上がる。 それが用意されたシナリオなのだから。 「悲しみを怒りに転化する。守る意志を破壊する意志へと帰化する。 貴方はグラハム・エーカーという存在を捨てる」 それが法則、ロジカルな道理、結果であるはずなのだと。 足し算と引き算をして、解を述べただけ。 グラハム・エーカーはそういうものだ。 そう出来ている。構成されているという解法がある。 つまり、この場合(パターン)ならば、 守るべき者の死を乗り越え、怒りを胸に燃え上がらせて、庇護者を復讐者に変え立たせる状況。 「シナリオ通りであるならば、貴方は今までの自分を捨てて、仮面を身につける。 さながら――」 そう、それはさながら。 武士道と呼ばれた、否、呼ばれる未来という。 「本来のグラハム・エーカーが歩むはずだった。 歴史をなぞるように……」 キャストは限界まで収縮された。 故に外れようのない、計測されうるシナリオは正史の反復。 武士道を名とする男の誕生と。 「果てに貴方は、神に挑み、そして散る」 復讐者は遍く死と交差し、終焉するのが定めだった。 「なのに貴方はこの場所に留まっています」 しかし現実は違った。 グラハム・エーカーは散る以前に、立ち上がることすら成し遂げない。 ここで消沈するのは、喩え最終的な結果が同じだとしても、計算外であることは否めない。 用意されていたシナリオから外れていることは確かだった。 「さてね、何故だろうな」 男の反応はそっけない。 辿るはずだった未来を語られて、なのに響いていない。 刺激の無く、変化は見られなかった。 ただ、自嘲だけが、ある 「ああ確かに、私はここで倒れる人間ではない。 私自身、そう思っていたのだ」 それは自虐や諧謔ではなく。 本心からの言葉であった。 「立ち上がる理由など、幾らでも見つけられるだろう。 天江衣を殺された直後のように、怒りに任せて動くことも出来た。 天江衣と約束したように、市民を守るため義にしたがって戦う事も出来たはずだ……」 グラハムとは、その様なものであるという認識。 インデックスに説明される以前から、この男は知っていたのだろう。 知っていて尚、この状況に甘んじるわけとは即ち。 「しかし、な。不思議だな。立てないのだよ」 本人すら分からない。 知らない何かが在るという。 「火が……な」 「……火」 聞き返すでなく反復した端末へと、もう一度苦笑って。 グラハムは虚空に呟いた。 「火が、つかんのだ」 まるで「気分が乗らない」とでも言うような軽さ。 同時にどこまでも深い奈落の諦観と共に。 「彼女が死んで、そしてそれを確かめてより、何故だろうか分らないが……」 一度消えたそれは、取り返しがつかないのだと。 「火がな、無い。私の中で、当然のようにあったそれが、ない」 だから立てないのだと。 「理論と反します。意図も、掴めません」 理由になっていない。 計算式を覆す要素になっていない。 言い返す端末に、責めないでくれと、グラハムは漸く少女を見つめ。 「しかたないさ。私にも分らないことだ。知らないことだ」 肩をすくめて、空を仰ぐ。 「だが、これだけは言える」 そして小雨を降らせる曇り空を、瞳に浮かべて。 「彼女と出会う前ならば、私は何を失おうとも、こうはならなかったろう。 例えば君が先ほど言ったようなシナリオ、ああ良いな、心が震えたかもしれない。 しかし今は――なんと言えばいいのかな、そうだな……」 こう、締めくくった。 「この気持ちに……愛がない……」 魂の、欠如。 いつの間にか急速に、超大の存在となった少女は、グラハムの中心に在ったものとすり替わっていた。 まるで魔法のような、幻想のような、少女。 いずれにせよ失ったものは、其れほどまでに特別な存在だった。 グラハムだけでなく、この世界全てにとって、決して失われてはならない者だったのだと。 失われてはならない彼女を守ることこそ、己に課せられた役割だったのだと、失った今こそ、心から信じられるから。 己は間違いなく敗北したのだ、と。 再起は不可能なのだと、確信する。 「つまり――」 インデックスという端末はポツリと呟きながら、 グラハムの視線を追うように、空を仰いだ。 神のシナリオを歪ませるほど、彼女の存在は物語の中心にあったのでしょうか、と。 端末は、言外に、黙する。 意図せぬ黙祷が再び流れた。 今度はより決定的な。 何かを諦めるには十分すぎる冷たさだった。 「いずれにせよ」 再びグラハムがそれを、終わらせる。 今度は明確な、会話の末に向って言う。 「物語(シナリオ)はここまでだ」 彼女亡き今、変えられる筋書きは、グラハムの意志が折れるのを早めただけという。 ただそれだけのことだと。 「はい。その言葉に異論はありえません。終着(ピリオド)に変更は皆無。 第七回放送以後、このまま殺し合いが再開されなければ。 神が降り、彼の手によって地は燃え、殺し合いは強制的に終焉を迎えます。 それは変えられない事実です」 「だろうな」 グラハムは納得し、そして覆す気力も無い。 一貫した、諦観と悲哀。 諦観は己に、そして悲哀は、とどのつまり、 いまだに諦めることすらできない、あの少年に。 「何かが変わったとしても、終わりは何も変わらない」 「はい。肯定します」 グラハムは、憐れんでいる。 インデックスは、ただ肯定する。 「我々は、死ぬ」 「肯定します」 変えられない事実。 変わらない現実を、二人は、見つめていた。 「抵抗するものは僅か。そして勝ち目などない」 「肯定します」 意志のない二人。 確認作業に従事していた。 「悲劇で、幕は閉じる」 「……肯定します」 バッドエンド、確定しているそれを、彼らは語り終えた。 ここで会話は終わる。 終わるはずだった。 けれどグラハムは無意識に、ついでのようにもう一つだけ口にした。 特に聞く必要もない余計なこと。 答えのわかっている、無駄なことを。 「生きる意志を示す者は、阿良々木暦、一人だけ、か」 哀れにも止まれない、諦められなかった少年の、孤独な敗北。 その、最終確認において―― 「否定します」 一つだけ、またしても、齟齬が生じた。 「……なに?」 「もう一人」 曇り空から視線を切ったインデックスが、今、見据える先に。 「たった今、確認されました」 滅び廃れた地を踏みしめて、此方に歩いてくる、『二人分』の足音。 一人は少年、阿良々木暦。 「照合――」 そしてもう一人、少年に手を引かれたその姿。 おぼつかない足取りで、それでも確かに自分の足で、こちらに向かって歩いてくる少女。 立ち上がった者が、ここに、少なくとも、一人きりではなく―― 「阿良々木暦と、そして平沢憂。 現時点で、この二名に対し、生存の意志を確認できます」 一人は、二人になって、 とても僅かな、けれど確かな変化が今、ここに帰還する。 喩え目に見えぬほど、感じ取れぬほど僅かな差異であろうとも。 それは即ち、決められていたシナリオを食い違わせる。 変調の因子に他ならなかった。 【 Fragments 5 『クライ』 -End- 】 時系列順で読む Back See visionS / Fragments 4 『君の知らない物語』 -平沢憂- Next See visionS / Fragments 6 『あめふり』 -Index-Librorum-Prohibitorum Ⅱ- 投下順で読む Back See visionS / Fragments 4 『君の知らない物語』 -平沢憂- Next See visionS / Fragments 6 『あめふり』 -Index-Librorum-Prohibitorum Ⅱ- 319 See visionS / Fragments 4 『君の知らない物語』 -平沢憂- 阿良々木暦 320 See visionS / Fragments 6 『あめふり』 -Index-Librorum-Prohibitorum Ⅱ- 319 See visionS / Fragments 4 『君の知らない物語』 -平沢憂- 平沢憂 320 See visionS / Fragments 6 『あめふり』 -Index-Librorum-Prohibitorum Ⅱ- 316 See visionS / Fragments 1 『もう幾度目かの敗北の跡は』 -Index-Librorum-Prohibitorum- グラハム・エーカー 320 See visionS / Fragments 6 『あめふり』 -Index-Librorum-Prohibitorum Ⅱ- 316 See visionS / Fragments 1 『もう幾度目かの敗北の跡は』 -Index-Librorum-Prohibitorum- インデックス 320 See visionS / Fragments 6 『あめふり』 -Index-Librorum-Prohibitorum Ⅱ-
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鳥バレしたァッー!orz 【戦闘フィールド設定――森林】 冷たい機械に囲まれた室内に、急速に風景が広がっていく。 視線を上へと傾ければ、そこには漆黒の宵闇と満天の星空。 寂寥感漂う冷たい夜空と、きらびやかな星々のコントラスト。 否応なしに、この殺し合いに巻き込まれた直後の空を思い出す。 嫌な思い出を掘り返されたような感触に、自然と視線が地上へと向いた。 新緑の色に生い茂るのは、見渡す限りの針葉樹林。 人間よりも巨大な幹と、目にも鮮やかな緑の葉。 青々とした木々の列を、しかし彼女は遥か上方から見下ろしていた。 【敵CPU機体設定――リーオー】 モニターに表示された名称は、獅子座の呼び名をもじったものか。 されど眼前に現れたそれは、百獣の王とは似ても似つかぬ、無骨な機械の人形だった。 とにかく、無骨なのだ。 いかにも軍用機だと言わんばかりの、カーキ一色に染められたボディ。 フレームにその形のまま着せただけの、装飾も何もない簡素な装甲。 表情も何もあったものじゃない、テレビ画面のようなガラスが張られただけの顔。 無骨を通りすぎてシンプル――最悪、適当と言っていいデザインだ。 全身で簡単な大量生産機であることをアピールする外観。そこには猛々しさも美しさも微塵もない。 されど、油断は禁物。 そんななりをしていても、やはりそれは兵器なのだから。 人よりのっぽな木々よりも、更に巨大な体躯を有した、身の丈15メートル以上の巨人なのだから。 【プレイヤー機体設定――】 並べられたモニターの1つに、自機の情報が提示される。 それこそがこの部屋を内包した外装であり、彼女が駆るもう1機の巨人の姿。 木々を踏み砕き顕現するのは、煉瓦と漆黒に染まった鋼鉄の魔神。 触れる物全てに牙を剥かんばかりの刺々しい装甲は、目の前のリーオーとは大違いだ。 大きく開いた背後の緋色は、さながら伝承の悪魔の翼。 左手からだらりと垂れ下がる刃の列は、雄々しく荒々しき竜族の尾か。 緑に輝く双眸が、眼前の敵を睨み付ける。 騎士のごとき、堂々たる偉容と。 邪神のごとき、禍々しき異様。 月明と星明かりに照らされし巨人は。 少女の操りし凶暴な魔剣は。 【――ガンダムエピオン】 その名はエピオン。 OZ-13MS。 次代の扉を開く者。 かのトレーズ・クシュリナーダが設計した、最も気高き決闘用モビルスーツ。 そしてミリアルド・ピースクラフトが操り、全地球人類を恐怖させた、最凶最悪のガンダムである。 ◆ 「よ、……とっ」 随所に呟きを織り混ぜながら、たどたどしい手付きでレバーを動かす。 モニター上で視線を右往左往させながら、慌ただしくボタンを操作する。 地図上に憩いの館と表記されたその建物の一角には、ロボットゲーム「戦場の絆」のシートに座る、琴吹紬の姿があった。 何故このようなことになったのか。今から追って説明しよう。 確かにあの円形闘技場において、ティータイムを装った毒殺作戦は成功した。 唯を取り逃がしてしまったものの、結果として船井と美穂子の2名を殺害することはできた。 だが、そこで問題が生じた。 どさくさの中で、罠に使用したティーカップが、残らず粉々に割れてしまったのだ。 これでは作戦を繰り返すことができない。 ポットだけではお茶は飲めない。 残り2人分のノルマを満たすために、代わりのカップを探さなければ、と思い、たどり着いたのがこの憩いの館。 そうしてカップを探すうちに、行き着いたのがこのゲームの存在だ。 なんでも、このゲームの本番モードで勝利すれば、そのまま敗者を死に至らしめることができるらしい。 身体的に強靭でない紬にとっては、まさに願ったり叶ったりの代物だ。 とはいえ、自分にゲームの才がなかった場合のことを考えると、いきなり本番モードに挑んで返り討ちに遭うのはまずい。 そこでまずはCPU相手に練習モードで勝負を挑み、自分がこのゲームを使いこなすに足る器か否かを確かめようとし、今に至る。 そして現在の琴吹紬は、当初の不安は杞憂であったと、徐々に認識しつつある。 初めにこのシートに座った時には、あまりのボタンの数に面食らったものだった。 おまけに機体のチョイスもよろしくない。 見ればこのガンダムエピオンという機体は、一切の射撃武器を有していないのだという。 格闘戦専用。 飛び道具なし。 何も考えずに飛び込むと、近づく前に蜂の巣にされる危険を伴う。 諸刃の剣。 素人にはお勧めできない。 そんな機体をいきなり初体験の人間に与えるなんてのは、ぶっちゃけいじめも同然じゃなかろうか。 そんなことを考えていたが、実際に動かしてみると、それらの不安も吹き飛んだ。 まず、エピオンは速い。 並の銃器では狙いもつけられない、圧倒的な加速力。 当たらなければどうということはない、といったところだろうか。 実際この練習モードが始まってから、彼女は敵リーオーのマシンガンを、全て難なく完全回避してみせているのだ。 そしてその能力を使いこなせるだけの、操縦技術。 どういう理屈かは知らないが、初めて動かすコックピットにもかかわらず、身体が妙にスムーズに動く。 たどたどしい手つきではあるものの、まるで自分の手足を扱うかのようだ。 どこをどうすればどう動くのか、いやに正確に理解できる。 それだけではない。読めるのは自機のみならず、敵機の挙動もだ。 相手の情報、次の行動予測……敵の全てが手に取るように分かる。 ゲーム開始時にメインモニターに浮かんだ文字――「SYSTEM EPYON」とやらの恩恵だろうか。 「そろそろ、攻めてみようかしら……」 地上からのマシンガンを猛烈な速度で回避しながら、ひどくあっさりとした口調で紬が呟く。 生きるための術――機体の移動方法は、これまでの回避行動で大体掴めた。 次は勝利するための術――攻撃方法を練習する番だ。 右手の大出力ビームソード、左手の高熱鞭ヒートロッド。そして飛行形態時のランディング・ギアとして使われるクロー。 エピオンの武装は少ない。おまけに遠距離戦に対応できるものがない。 これらの武器を最大限に活かせなければ、寿命を延ばすことはできても勝ち残ることはできない。 【――CAUTION!】 と。 その時。 「あら……?」 不意に、モニターの中央に現れる文字。 突然表示されたレッドシグナルが、パイロットたる紬に警戒を促している。 【挑戦者が現れました。本番モードの対人戦へと移行します】 程なくして現れたのは新たな文章。 同時に、眼下のリーオーが消滅する。 突然の対人戦――これが説明書に記載されていた、乱入システムというものなのだろうか。 どこか別の建物で、何者かが同じゲームをプレイしている。 あるいはこの建物にやって来て、別のシートに座っているのかもしれないが。 「ようやく来た……本番モード」 そして紬の興味を引く、もう1つの記述。 待ちわびていた存在への期待感へと、覚悟しなければならないという緊張感。 本番モード――すなわち、金を賭けた真剣勝負。 勝利者はペリカを入手することができ、敗北者は逆にペリカを支払わなければならない。 しかし、所持金ゼロの者がコックピットのシートについた瞬間、賭けの対象は命へと変わる。 支払いのできなくなった者は、その場で首輪を爆破されてしまうのだ。 もちろん自分は一文無し。恐らくは相手もそうだろう。 この島にペリカを入手できる手段がそうそうあるとは限らないし、こんな短時間でたどり着ける可能性はもっと低い。 CPU相手に本番モードで勝負したなら話は別だが、そんなハイリスクローリターンな勝負など誰がするだろうか。 【対戦相手機体――Oガンダム】 やがて表示される、対戦相手の機体名。 自分の乗っている機体と同じ、ガンダムという名称が目についた。 「ゼロ、ガンダム……?」 いや、これはオーガンダムと読むのか。 口にした直後に、内心で訂正する。 同時に目の前に現れたのは新たな巨人。 これがOガンダムとやらか。なるほど、ガンダムとはいわばブランド名で、こういう顔をした機体の総称だったのか。 自らの楽器知識に照らし合わせながら、対峙する相手を分析する。 彼我の共通点は少ない。 こちらが黒と煉瓦色の機体であるのに対し、敵は白とグレーの機体。 エピオンのような過剰な装飾もほとんどなく、リーオーよりはましといったくらいの、極めてシンプルなデザインにまとまっている。 唯一似通っているのが前述の顔だ。 ツインアイに独特なフェイスカバー、そしてV字型のアンテナ。 人間の思考とは単純なもので、たったそれだけの共通点でも、2つの機体が似ていると錯覚してしまう。 否、これも素人目に見たからこその感想なのだろうか。 「……っと、いつまでも考えてる場合じゃないわね」 思考を切り替える。 目の前では乱入者たるOガンダムが、油断なく右手のライフルを構えている。 既に勝負は始まっているのだ。棒立ちで乱れ撃ちにされるわけにはいかない。 ぶぉん、と音を立て、ビームソードを抜刀。 蛍光色の巨大なエネルギー刃が、夜の暗黒を切り裂き発光。 腰部から伸びた動力ケーブルから、莫大な出力が注ぎ込まれているのが分かる。 「行くわよ――ガンダムエピオン」 ここがいわゆる正念場。 命と命の奪い合い。 勝てば殺せる、負ければ死ぬ。 真剣な面持ちでモニターを睨み、少女の口が呟いた。 ◆ 轟。 大気を震わす爆音と振動。 ざわざわと枝葉をかき鳴らすのは、宵闇に浮かぶ蒼炎と風圧。 緋色の悪魔が虚空を裂き、猛烈な加速をもって突撃する。 巨大な翼が空を切った。風が鋭い悲鳴を上げた。 炎と風とイオン臭を伴い、ガンダムエピオンが標的へと殺到。 されど。 先手を取ったのはエピオンにあらず。 悪魔の騎士は少数派。あらゆる世界の全てのモビルスーツが、接近しなければ攻撃できないというわけではない。 がしゃ、と構えられるは黒光りするライフル。 銃身を握り締めるのは、白と灰の巨人の右手。 トリガー・プル。 GNライフル・ファイア。 先に攻撃したのはOガンダムの方だ。 ばしゅう、と独特な音を上げ、地上から舞い上がる彗星が宙へと向かう。 「!」 されど。 先手を取ることは、先にダメージを与えることと直結しない。 先に手を出したからといって、確実に命中する保障があるわけではない。 迫りくるビームを回避する。 最低限の動作で鮮やかに、灼熱の魔弾を身をよじってかわす。 素人技ではない。一瞬、面食らったようにOガンダムが沈黙した。 しかし、それもいつまでも続くわけではない。 敵がそれなりの手練れだというのなら、手練れなりに対処するまでのこと。 そう言わんばかりに、再度射撃態勢へと入る。 発射、発射、発射。 2発目、3発目、4発目。 最初にかわされた分を除けば、たっぷり7発分もの流星群。 当然、その程度で当たるわけがない。 カット、カット、ついでにターン。 ガンダムエピオンが発揮するのは、目まぐるしいまでの空中軌道。 さながら暗雲の中を稲妻が駆け抜けたかのような――そう錯覚させるほどのジグザグ・カット。 この程度は当たらない。フェイントでもかけない限りは、あの高速移動を捉えるのは難しい。 故に、これはあくまでも布石だ。 態勢を崩した瞬間に、GNビームサーベルを突き立てるための牽制。 「それでも……!」 だが――そんなことは百も承知! 敵の射撃はあくまで牽制、本命は直後のビームサーベル! エピオンシステムの未来演算は、その可能性すらも予測している! 瞬間、激突。 ほとばしるのは激烈なスパーク。 繰り出されたGNビームサーベルと、強引に突き出したビームソードの真っ向衝突。 ばちばちと音を立て駆け巡る光が、深夜の森を真昼色に染めた。 大出力のエネルギー同士が、大気の歪みすらも伴って猛反発。 激突を制したのは――やはりエピオン! 機体動力から直接供給される潤贅なエネルギー量は、そのまま実剣でいうところの、切れ味と重量に直結する。 そんじょそこらのなまくらでは、まともに打ち合うこともかなわぬ巨大剣だ。 押し負けたOガンダムが吹き飛ばされる。 痛烈な圧力をその身に受け、ずるずると両足を大地に滑らせる。 足元に立ち並ぶ針葉樹が、衝撃でばたばたと薙ぎ倒された。 刹那、猛追。 この程度では攻め手を緩めない。 なおもバーニアの炎を噴かせ、殺人級の超加速。 それを実現できるのは、Gの伴わぬバーチャルゲーム故か。 それとも原型となった機体そのものが、半端なパイロットの命など顧みぬ、狂った設計に基づくモンスター・マシンであるが故か。 地表すれすれを滑るように疾駆。立ちはだかる木々は薙ぎ倒し進む。 大きく開いていた距離が、僅か一瞬でゼロ距離へと縮小。 「ここっ!」 びゅん、とビームソードがしなった。 雷鳴と炎熱と閃光を纏う、神話の大剣が掲げられる。 高々と持ち上げられた凶刃が、勢いよくOガンダムへと振り下ろされる。 「惜しいっ……!」 紬の顔がしかめられた。 ソードの斬撃は空振りに終わった。 標的を見失った灼熱の魔剣は、眼下の森林へと叩きつけられる。 じゅっ、と。 まるで牛肉を鉄板にでも敷いたかのように。 呆気ない音を立てながら、十数本の樹木が一瞬で蒸発。 横に逸れたわけではない。 背後に引いても剣は届く。 防御しても弾き飛ばせる。 すなわち、白の巨人の逃げ場所は――上。 それはさながらオーロラの翼。 それは月光浴びる蝶のごとく。 光の粒子を双翼となし、天高く舞い上がらんとする巨人がある。 新緑の光翼を羽ばたかせ、GNビームライフルを突きつけるガンダムの姿。 されど――それも想定の範囲内! 敵機の持つ装備の中に、真っ向からエピオンのビームソードを受け止められるものはない。 ならば取るべきは防御ではなく回避。 そして間合いを取り、GNビームライフルで一方的に攻撃する――それがOガンダムの思惑。 万が一かわされた時の相手の動向は、既にエピオンシステムが予測済み。 そして対処法さえも、とっくの昔に構築済みだ。 ――脚部にヒートロッドを放て! 「これねっ!」 システムの指示に従い、左腕部を振り抜く。 漆黒の竜鱗に覆われた尾が、唸りを上げて敵機へ殺到。 ぐわん、と咆哮する音は、虚空をぶち抜くソニックブームか。 ぎゅる、と捕縛。 さながら罪人の足枷のごとく。 地上から伸びた黒の竜蛇が、白の巨人の右足を捕らえた。 超高熱の刃の鞭――ヒートロッド。 その発熱機構をオフにし、投げ縄の要領で巻きつける。 「ええいっ!」 気合一声。 剛腕一閃。 振りかぶる左腕の動作に合わせ、巨体を引きずり回すヒートロッド。 総重量53.4トンの巨体が、無様に宙を舞い大地へとダイブ。 ずぅん、と鳴り響く地響きは、びりびりと風景すらも振動させた。 踏み潰された樹木がへし折れ、もうもうと立ち込めるのは土煙。 またもエピオンが読み勝った。 紛争根絶を謳うガンダム――その始祖に当たる栄誉の機体が、みっともなく仰向けに倒れていた。 「すごい、すごいわ! 敵の動きが見える! エピオンの言うとおりにしただけで、全部上手くいってる!」 口元を喜色に歪め、頬をほんのりと朱色に染めて。 興奮を抑えきれぬ様子で紬が叫んだ。 このエピオンは完璧だ。 射撃武器のハンデなどものともせずに、敵機をこうも見事に圧倒している。 エピオンシステムの未来予知が、戦況を完全に支配している。 いかな戦術も戦略も、この無敵の先読みの前では意味をなさない。 全能の軍神――あるいは、絶対の魔王か。 「さぁ――これでとどめよっ!」 刹那、飛翔。 舞い上がるガンダムエピオンの巨体。 緑碧の光剣を月へと掲げ、深紅の翼を星空に広げ。 白光を全身に受け煌く漆黒の悪魔が、勢いよくOガンダム目掛け急降下。 空気を切り裂き。 樹木を揺るがし。 裂音さえも置き去りにして。 音速で飛来する魔性の刃が、白と灰の巨人を貫かんと肉迫。 これで勝負が決まる。 相手はこれで確実に死ぬ。 エピオンに不可能なんてない。 「見えるわ! 私の勝利と、貴方が死んでいく姿がッ!」 その、瞬間。 ――破局は呆気なく訪れた。 「……えっ……?」 何が何だか分からなかった。 否、事実としては捉えていた。 できなかったのは、それを真実として認めることだ。 Oガンダムが死んでいない。 コックピットを狙ったはずの一撃が、しかしかわされ左肩を潰す程度に留まっている。 瞬間、光が吼えた。 桃色の閃光が引き抜かれた。 呆然とする紬の目に浮かぶのは、エピオンのビームソードではなく、OガンダムのGNビームサーベル。 桜の煌きが広がっていく。 視界いっぱいがピンクに満ちる。 コックピットのモニター全てが、ビームサーベルの光に塗り潰される。 【YOU LOSE】 表示されたのは絶望の宣告。 貴方はコックピットを破壊されました。 この戦いは貴方の負けです。 ペリカの提示が確認できませんでした。 これより首輪を爆破します。 「っ……い、嫌っ……」 ぴ、ぴ、ぴ、ぴ、ぴ。 鳴り響く電子音と点滅するランプ。 ペナルティたる爆弾首輪――その発破までのカウントダウン。 「いや、いや、いや、いやぁぁぁぁっ!」 悲鳴と共に両手を伸ばす。 がちゃがちゃ、がちゃがちゃと音が鳴る。 全てのモニターがブラックアウトした、薄暗い操縦席の中で。 涙を流す琴吹紬が、首輪を外さんともがき足掻く。 「やだ、やなのぉっ! 外れて! お願い、外れてよぉぉっ!」 早く、早く首輪を外さなければ! このままでは首輪が爆発する! 最初に犠牲になったあの人のように、首から上が吹き飛んでしまう! 死ぬ! 死ぬ! 死んでしまう! このままでは私は死んでしまう! 外れろ! 外れてくれ! いやだ、私はまだ死にたくない! 何で外れてくれないんだ!? 何で!? 何で!? 何で!? 何で!? 「いやあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」 どかん、と。 悲痛な叫びも虚しく、金属の首輪は爆発した。 首から先が宙を舞い、ごとりと音を立ててコンソールに落ちる。 涙で濡れた虚ろな瞳が、何も映らないモニターを見つめていた。 【琴吹紬@けいおん! 死亡確―――】 「――はっ!?」 叫びと共に、我に返る。 荒い息をあげながら、しばしそのまま沈黙する。 やがて、記憶が蘇ってきた。 未だ混乱する意識の淵から、じわじわと恐怖が蘇ってきた。 じんわりと視界が水気で滲む。 がたがたと両の肩が震える。 びくびくと指先が痙攣する。 ばくばくと心臓が鼓動する。 涙やら汗やら鼻水やら、あらゆる液体が全身から噴き出した。 「今の、は……!?」 震える指先で首元をなぞる。 まだちぎれていない。首輪すらも健在だ。 であれば、今のは何だったのだ。 今の今まで見ていたのは幻だったのか。 ――ビームソードは推奨しない。かわされてサーベルの反撃を食らい、死ぬ。 システムが告げるのは簡素な制止。 目の前のモニターに視線を向ければ、未だエピオンは空中にいた。 地上にはOガンダムが倒れていて、ゆっくりと上体を起こしていた。 現実には何も起きていない。 エピオンはまだ突撃していなかった。 Oガンダムはまだ反撃していなかった。 決着はまだ着いていなかった。 紬はまだ死んでいなかった。 「どういう、ことなの……!?」 理解不能。 解読不能。 自分は夢を見ていたというのか。 あれほどにリアルで鮮明な夢を、一瞬のうちに見たというのか。 有り得ない。 有り得るはずがない。 そんな夢を見る理由がない。 であれば、これは一体何だ。 今なお五体を寒気に震わせる、あの不可解な幻影は―― 「……っ!」 瞬間、耳を打つ音。 これまで音楽と共に生きてきた半生の中でも、聞いたことのない不可解な音。 Oガンダムの音だ。 GN粒子の光の翼が、風を掴んで羽ばたいた音だ。 紬が空中で呆けているうちに、敵機が目と鼻の先まで接近してきたのだ。 「ひっ……いやああぁぁぁぁっ!」 恐慌と共に、ソードを振るう。 炎熱伴いし必殺の重剣が、しかし虚しく空を薙ぐ。 当然だ。 そんなお粗末な振りの剣が、そう簡単に当たるものか。 身をよじり回避したOガンダムが、すれ違いざまに引き金を引く。 GNビームライフルがバックパックを撃ち抜き、コックピットごと爆発させる。 再び機体を撃墜させられ、首輪の爆破と共に死ぬ自分。 「何なの!? 何なのよこれは!?」 それでも自分は死んでいない。 ただ自分が死ぬイメージを、視覚と聴覚と触覚で体感させられただけ。 恐怖に揺れる叫びと共に、新たなイメージが沸き上がってくる。 背後からのGN粒子の風圧に煽られ、姿勢を崩した隙に刺されるエピオン。 頭部をライフルで破壊され、何が何だか分からぬうちに蜂の巣にされるエピオン。 機体にがっしりと組みつかれ、自爆装置に巻き込まれ消滅するエピオン。 その度に首輪が爆発する。 その度に琴吹紬が死ぬ。 見たくもない死の光景が、何度も何度も再生される。 「いや、いやよ! 私は死にたくない! こんなの見たくなんてない!」 頭を抱える紬の首が、またも爆破され吹き飛んだ。 肉をちぎられ骨を砕かれ、血を抜き取られていく痛みと苦しみが、何度も何度も再生された。 ――お前の敵は何だ? システムが語りかけてくる。 今や無限の軍勢と化したOガンダムの襲撃に混じり、脳裏に浮かぶメッセージがある。 それはなぶり殺しにされる度、何度も何度も蘇る悪魔の声。 ――お前がこの力で倒したい敵は何だ? これはエピオンが見せているのか。 この無限の敗北と死に様は、ガンダムエピオンのシステムが見せているのか。 勝利を見せていたはずのエピオンが。 敗北などないはずだったエピオンが。 もはや勝利の方程式は見えない。 そこまで意識が及ばない。 敗北を招く失敗例ばかりに、ひたすらに意識が向いてしまう。 ――見せてみろ、お前の敵の姿を。 瞬間、闇の中に顔が浮かぶ。 敵のイメージを切り裂いて、無数の顔が浮かび上がってくる。 分厚い唇が特徴的な男――違う! 船井さんはもう殺した! 帽子を目深に被った年下の少女――違う! 撫子ちゃんは救えなかった! ギターを構え、にこにこと笑う茶髪の友人――違う! 唯ちゃんごときの話をしてるんじゃない! 私の敵は誰!? 一体私は、今誰と戦ってるの!? 目の前にいるはずのOガンダム!? 私を惑わすガンダムエピオン!? もう何も見えない! 何も分からない! 誰が敵で、誰が味方か、誰がどこにいるのかすらも分からない! 敵はどこ!? 敵は誰なの!? 私の敵は誰なのよ――――――――――――!? ――凶がれ。 「!」 不意に。 声が、響いた。 視覚も聴覚も働かなくなった闇の中、凛と響く声があった。 ――凶がれ。 この囁きを知っている。 この殺気を覚えている。 闇を切り裂き現れるのは、忌々しいほどに美しい少女。 ――凶がれ。 優雅で鮮やかな紫の髪。 妬ましいほどに整ったスタイル。 引き裂きたいほどに白い肌。 虚ろな気配を宿した灼眼と、吐き気を催すほどの嫌な笑顔。 「浅上、藤乃ッ……!」 そうだ。 こいつがいた。 ――凶がれ。 全てはこいつのせいだった。 守ろうとしていた千石撫子も、こいつのせいで死んでしまった。 助けてくれた人達も、全てこいつに殺されてしまった。 こいつのせいで制服姿を怖れ、まともな思考能力を奪われてしまった。 こいつのせいで平沢唯達に捕まり、危うく殺されるところだった。 ――凶がれ。 許さない。 こいつだけは許しておけない。 こいつは私の手で決着をつける。 いずれ皆等しく死ぬ宿命なら、こいつの息の根は私が止める。 いつの間にかエピオンの剣は、私自身の手に握られていた。 光の剣を強く握り、闇夜に歩みを進めていく。 ――凶がれ。 右の瞳は右回転。 左の瞳は左回転。 赤い光と緑の光、2つ合わせて二重螺旋。 皆を殺した歪曲の念力を、押し退け掻き分け薙ぎ払って進む。 私の敵は浅上藤乃。 エピオンが倒す敵は浅上藤乃。 魔眼を輝かす少女の姿が、白と灰色の巨人に重なる。 剣を携える私の姿が、黒と煉瓦色の悪魔に重なる。 私の敵は浅上藤乃。 お前は私がこの手で殺す。 他の全ても私が殺す。 高見の見物を決め込んでいる、帝愛なる連中も私が殺す。 「私の敵は……私の命を奪う者と、私の命を弄ぶ者……」 エピオンシステムの闇が晴れた。 漆黒に一筋の白光が差した。 未来が見える。 望む未来がそこに見える。 学校の友達を殺す未来。 サングラスの髭面を殺す未来。 小さな白服の女の子を殺す未来。 そして――浅上藤乃を殺す未来。 殺してやる。 殺してやる。 殺してやる。 「私が――」 お前を殺してやる。 光の前に立ちはだかる女に、光の剣を突き立てた。 「……ぅわあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――ッッッ!!!」 肺の空気全てを吐き出すような、猛烈な絶叫がコックピットに響いた。 ◆ 悪魔の瞳に力が戻る。 ガンダムエピオンが再起動する。 さながら光の天使のごときOガンダムの両腕に、真っ向から掴みかかっていた。 これまで動きを止めていた機体が、突如として反撃に出たのだ。 ぎりぎりと装甲の擦れる音。 みしみしと関節の軋む音。 押し返す勢いを味方につけ、漆黒と深紅の顔面が迫る。 瞳が、光った。 Oガンダムのメインカメラ全体に、光り輝く魔眼が映し出された。 さながら冥府の魔獣のような。 地獄の淵から覗くような。 ただ光っているだけのはずのツインアイに、底知れぬ気配が宿される。 そこに怖れを抱いたのか。 驚き竦み上がったのか。 膠着していたOガンダムが、瞬間押し返され始めた。 轟然と唸りを上げるエンジン。 緋色の翼を羽ばたかせる悪魔は、今にも食らいつかんばかりに巨人を睨む。 ずぅん、と振動と衝撃を感じた。 おびただしい量の土煙が上がった。 「ァアアアア―――ッ!」 されどエピオンは止まらない。 狂った雄叫びを上げる紬に呼応し、尚もOガンダムの身体を押す。 土煙は砂嵐へと変わった。 一陣の突風が森林んえぐった。 もつれ合う2体のガンダムが、爆音と共に大地を滑る。 灰色の腕がビームライフルを構える――させない! 撃たれればまた私が死ぬ! 左腕のエピオンクローが、黒き銃身を弾き飛ばした。 白の左手がビームサーベルへと伸びる――やらせない! コックピットを突かれれば私が死ぬ! ビームソードを左手に突き刺し、サーベルを掴む前に粉砕した。 がりがりと刃が地面を削る。 Oガンダムの手のひらを串刺しにした光剣が、深々と大地に谷間を刻む。 「うああぁぁぁぁッ!」 必死で操縦幹を操った。 ひたすら両腕を繰り出した。 鳥の爪のごとき黄金のクローで、一心不乱に敵を殴った。 殺す。 殺す。 殺してやる。 これ以上反撃なんてさせない。反撃を許せば自分が死ぬ。 黒の悪魔が装甲を穿ち、白の巨人を汚していく。 闇に映える白色の装甲が、みるみるうちに砕け散っていく。 ぐぐ、と顔面が持ち上がった。 がん、と左手で地面に叩きつけた。 鷲掴みの姿勢を取るエピオンの手が、ぐいぐいとOガンダムの頭部を地面に押しつける。 エピオンクローが顔面に食い込み、ばりんとメインカメラが砕けた。 「ァァ、ァァ! ああぁっ!!」 びゅん、と振り上がったのは閃光の魔剣。 極大の熱量と切れ味を内包した、ビームソードが牙を剥く。 馬乗りの態勢になったエピオンから、Oガンダム目掛けて怒濤の乱撃。 ざくり、ざくり、ざくり。 刺す、刺す、刺す。 右腕が本体と別れを告げた。 左肩の装甲が砕け飛んだ。 胸元が音を立てて蒸発した。 見るも無惨ななぶり殺し。 果たして誰に理解できるだろう。 このガンダムエピオンという名のモビルスーツが、決闘用機として造られた機体であることを。 気高きトレーズ・クシュリナーダの理想が、この機体に込められているということを。 されど、エピオンは敗者のための剣。 盲目的に勝利を求める愚か者には、悪魔は厳しく、残酷でありすぎた。 「ぅぅうううああああああぁぁぁぁぁ―――ッ!!!」 遂にコックピットが潰される。 腹部に魔剣が突き刺される。 光の剣は一太刀で巨人の身体を貫き、深々と鋼の臓腑をえぐった。 ぐるり、ぐるりと掻き回す。 憎悪と敵意と殺意を込めて。 仮想空間の操縦席が、閃光と炎熱と雷鳴でぐちゃぐちゃになる。 それでようやく限界を超えたのか。 猛烈な風圧と炎熱を伴い、敵機は爆裂、四散した。 爆炎は瞬く間に新緑を巻き込み、針葉樹林を埋め尽くす。 漏れ出す緑の光の粒は、破壊されたGNドライヴの吐き出す粒子か。 ぱちぱちと火の粉が爆ぜた。 炎色に染まる夜空を、無数のGNの蛍が舞った。 光と熱の支配する地に、立っている機体はただ1つ。 「……っくくく……あははははは……」 乾いた笑いが響き渡った。 少女の口を突く笑いだった。 琴吹紬が我が身を預けるのは、灼熱と閃光に照らされる魔神。 英雄が勝ち名乗りを上げるように、光の剣を高々と上げる。 野獣が満月に吼えるように、顔を持ち上げ目を瞬かせる。 「やっぱりそうよ……私のエピオンは最強なのよ……この力があれば誰にも負けない……浅上藤乃にだって負けはしないわ……」 もういらない。 何もいらない。 青酸カリも必要ない。このエピオンの力さえあればいい。 どれほどの身体的実力差があろうと、ゲームの世界では関係ない。 あの魔眼の使い手であろうと、この力の前では等しく無力だ。 自分とエピオンさえあれば、どんな敵とでも戦える。 何であろうと、このエピオンの剣が薙ぎ払う。 「あはははははは……」 火と蛍の海で少女が笑う。 赤と緑の螺旋の中で、漆黒と煉瓦の悪魔が笑う。 【YOU WIN】 メインモニターに浮かぶ文字すらも、少女の目には浮かんでいないようだった。 【○○○○@×××× 死亡確認】 【C-3/憩いの館(地下ゲーセン内)/1日目/昼】 【琴吹紬@けいおん!】 [状態]:ゼロシステム暴走、狂喜 [服装]:ブラウス、スカート [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、忍びの緊急脱出装置@戦国BASARA×2、軽音楽部のティーセット、シアン化カルシウム入りスティックシュガー×10 桜が丘高校女子制服(血濡れ) 、薬局から持ってきた薬品多数@現地調達 [思考] 基本:この島にいる皆を殺して生き返らせる事によって救う 0:私の命を狙う者……そして私の命を弄ぶ者……全てが私の敵! 1:全ての参加者をエピオンで殺す。 2:浅上藤乃をエピオンで殺す。 3:いずれ唯もエピオンで殺す。 4:主催者達もエピオンで殺す。 5:誰にも勿論殺されたくない。 6:阿良々木暦に会ったら、撫子ちゃんの事を伝えようかしら。 [備考] ※強い憎悪により、一時的に浅上藤乃に対するトラウマを克服しました ※名簿のカタカナ表記名前のみ記載または不可解な名前の参加者を警戒しています ※E-3北部~E-4北部間の何処かに千石 撫子の死体があり、すぐそばに彼女のディパック(基本セット、ランダム支給品1~3入り)が落ちています。 ※名簿のカタカナ表記名前のみ記載または不可解な名前の参加者を警戒しています ※眼帯の女(ライダー)の外見情報を得ました ※殺し合いにプロのロボットパイロットが参加している可能性に気づいていません ※ゼロシステムの影響で暴走状態に陥りました。戦闘に関係すること以外に対する思考力が著しく欠如しています。 また、ガンダムエピオンがあれば絶対に誰にも負けないと思っています。 ※「戦場の絆」の自機が毎回ランダムで変わることは、半ば忘れかけています 【エピオンシステム@新機動戦記ガンダムW】 ガンダムエピオンのコックピットシステム。 近年の資料では、原作中でモニターに表示された「SYSTEM-EPYON」の表示から、便宜上このように呼称されている。 (対してウイングガンダムゼロのゼロシステム起動時には、「SYSTEM-ZERO」と表示されている) 根幹にはゼロシステムに酷似した装置が組み込まれており、文字通り乗り手に未来を見せる機能を有している。 全ての未来は乗り手の脳に主観として認識させるようになっており、 相当精神力の優れた者でなければ、死の可能性のビジョンに対する恐怖などから、暴走を招く可能性を孕んでいる。 投下は以上です。 とりあえずエピオンに乗る人は誰でも融通は利いたのですが、 どうも「ガンダムVSガンダム」を見る限り、戦場の絆ではゼロシステムが再現されないようなので、泣く泣くボツに。 Oガンダム弱すぎじゃね? と思われるかもしれませんが、まぁ、ロボットに乗ったことのない人が相手ということでw
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731 :名無しさんなんだじぇ:2011/12/10(土) 18 42 02 ID lsFTCLuA とーか「さぁ!バリバリ歓迎会の準備をしますわよ!」 一同「おー」 部長「田井中さん、力あるのね。羨ましいわ」 律「えぇ、ドラムは体力ないと勤まらないので」 部長「でもキャスターさん激しいんでしょ?田井中さん身体もつ?」 律「あぁ見えても加減してくれますから…あ、律でいいですよ」 部長「ありがとう律ちゃん。私の事も久って呼んでね」 律「あはは!久さん気さくでいいですね」 美穂子「田井中さん、ごめんなさい、これあっちにお願い出来ないかしら?」 律「あ、はーい。重っ?!よくこんなの持てますね」 美穂子「田井中さんほどじゃないわ」 律「いやぁあたしよりムギ…琴吹の方がよっぽどバカ力で…」 美穂子「そんな畏まらないで。私達仲間でしょ?」 律「あ、はい!」 唯「ねーねーあずにゃん。さっきからりっちゃん、みほみほと竹井さんの間行ったり来たりしてるよ?」 あずにゃん「あー言われてみれば…まぁなにかあるわけでもないみたいですし」 池田「キャプテンがなにも無いように牽制してるんだし」 唯「え、どーゆーこと?」 池田「清澄のスケコマシがあんたたちのとこのドラマーを狙ってるってことだし」 唯「?」 あずにゃん「うわぁ…命知らずですね、あの人…バレたらキャスターさんになんかされますよ…」 池田「どーせそれもスリリングでいいとか思ってるし…」 732 :名無しさんなんだじぇ:2011/12/10(土) 18 47 03 ID lsFTCLuA とーか「あ、そこはこうしたほうがよろしくてよ!そっちはこう!」 筆頭「なぁ…さっきから予定にないとこ拡張してねぇか?」 小十郎「収拾がついてませんね。かといって彼女の立場を考えると止めるわけにも行かず…」 筆頭「まぁ気が済むようにやるまでだがよぅ…こりゃ確実に間に合わねぇぜ?」 とーか「そこ!手が止まってますわよ!あ、そこはこうお願いしますわ!」 筆頭「やれやれ…」 733 :名無しさんなんだじぇ:2011/12/10(土) 21 13 11 ID lsFTCLuA 衣「如何にせん…」 ?「どうしたんだい、扉の前で難しい顔して」 衣「この中でとーかが待っていることは分かる。だが衣は歓待を受けるような事はしておらず… むしろグラハムたちの足を引っ張ることしかしておらぬ…」 ?「なんだ、そんなことかい?君は十分平衡を崩したじゃないか」 衣「衣はなにもなしてない!結局グラハムたちは衣のせいで現に危機と直面しておるではないか!」 ?「でも君がいなければ白衣ちゃんを動かせなかった。 首輪を解除する道を示したのは君の功績だよ」 衣「心にも無い世辞をいうな…!」 ?「お世辞なんかじゃないさ、ただの事実確認だよ。 君はよくやった。歓待を受けるだけの事はしたさ」 衣「しかし…」 ?「それにさ、そこで立ち止まってちゃ、君の従姉妹も気が気でないはずだぜ? 迷子になっちまったかといらぬ心配をかけちまうだろ?」 衣「衣はそんな清澄の嶺上使いのような事はしない!」 ?(へぇ…なるほどねぇ…) 734 :名無しさんなんだじぇ:2011/12/10(土) 22 39 15 ID lsFTCLuA 筆頭「おい…こりゃあ…」 小十郎「なんともまがまがしい…」 幸村「うぅむ!リュウモンブチ殿の指揮通りに作っていたら安土城になったでござる!」 カイジ「一日で城が出来た事自体驚きだが…おい、一体こりゃあどういうこった」 とーか「おかしいですわねえ…ファビュラスな会場を作ろうとしてましたのに…」 部長「ま、まぁ天江さんの到着前に完成しそうでよかったじゃない!」 【安土城二つ目完成直前!】 735 :名無しさんなんだじぇ:2011/12/10(土) 22 57 27 ID lsFTCLuA 衣「そうだな、とーかにこれ以上無用の心配をかけるわけにもいくまい …行くことにする」 ?「その前に贈る言葉じゃ無いが伝えておきたい事があるんだがいいかい?」 衣「なんだ?」 ?「君はどうして自分が死んだ後の現世の様子を承知してるんだい?」 衣「…?よく分からないがおそらく先程の女性二人に教えてもらったはずだが?」 ?「なるほどねぇ…だけど清澄の嶺上使いが迷子癖があるとかなんで君は知っているんだい?」 衣「それは…合同合宿や全国の開会式で…」 ?「おかしいねぇ…君は県大会直後にここに呼び出されたんじゃないのかい?」 衣「な、なにを言いたい!お前の言いよう…まるで…まるで…」 ?「なにかな?」 衣「…衣が…衣でないみたいではないか!」 736 :名無しさんなんだじぇ:2011/12/11(日) 00 05 42 ID EqmCo0yg ひたぎ「やっと新約3巻読み終わったそうよ」 C.C.「随分時間が掛かったな…日付を跨いでいるじゃないか…」 ひたぎ「それで内容についてなんだけど…」 C.C.「いやそれはダメだろ…ここで言っていいことじゃない」 ひたぎ「まあそうよね…って言うかもう今の死者スレの流れがそれを許さないわね」 C.C.「みんな歓迎の準備をしているしな…」 ひたぎ「ユフィさんはひたすら土下座のフォームの最終チェックをしてるしね…」 C.C.「で?お前は土下座の準備をしなくていいのか?」 上条「…え?」 ひたぎ「いやだってあの発言は…ねぇ…」 C.C.「結構傷付いていたと思うぞ…ちゃんと謝っておけ」 黒子「全くですの…」 美琴「うん…あれはちょっと…」 上条「…分かってるよ…焦ってたとはいえ、言っちゃいけないことを言ったってのは…きちんと謝るよ」 ひたぎ「じゃあ今から鉄板の用意をしてもらうように言ってくるわ」 上条「ちょっと待って!!さすがに焼き土下座は勘弁して!!!」 737 :名無しさんなんだじぇ:2011/12/11(日) 01 56 32 ID EqmCo0yg インデックス「ただいま…」 上条「あ、お帰りインデックス…」 インデックス「………はぁ…」 上条「インデックス…」 ひたぎ「元気がないわね…」 C.C.「やっぱりあのことを気にしているのか…」 上条「それはそうだろ…目の前で友達があんなことになったら…」 ひたぎ「え?…あっ、そっちの話?」 C.C.「あぁ~そうか…そっちの話か…」 上条「………何の話だと思ったんだ?」 ひたぎ「いや~てっきり…ねぇ?」 C.C.「ああ…絶対にあっちの話かと…なぁ?」 上条「曖昧な表現でごまかそうとするな…はっきり言え」 ひたぎ「じゃあ、まあ…」 C.C.「ネタバレにならない範囲で…」 上条「言ってみろ」 二人「「彼女は本当にメインヒロインなんですか?」」 上条「絶対に言ってはならないことを!!」 ひたぎ「まあ私も人のこと言えないんだけどね…」 C.C.「ひーちゃんは大丈夫だよ…もうすぐ『恋物語』が発売するから」 上条「…とにかくインデックスを元気づけないとな…あいつも歓迎会に誘うか」 ひたぎ「それって大丈夫なのかしら?」 C.C.「色々な意味で…」 上条「『死者スレ』は何でもアリだろ!?だったら大丈夫だ!!」 二人「「ツッコミがそれ言っちゃダメだろ」」 738 :名無しさんなんだじぇ:2011/12/11(日) 02 23 00 ID JuL/uYCw ?「そうだねえ…君のありようを見るにそのように思えて来るねぇ…」 衣「バカな!グラハムと初めて戦えた時の喜び! 必死になって首輪を解除してくれたあらららぎとインデックスへの感謝! …なんの甲斐も無く心臓が止まったあの無念 全て衣の中にある!これが偽りであっていいはずがない!」 ?「なら何故君は激昂してるんだい?嘘と思うのなら笑って済ませるだろう」 衣「それは…!それは…」 衣「なぁ教えてくれ…この衣は何者だ?衣は衣でないのか…?」 ?「自分が何者で何処へ行くのか…か。 ローティーンなら誰しも思い悩む所だねぇ」 衣「戯れ事を弄ぶな!」 ?「本質的な所は変わらないさ。扉の向こうの連中も多分君と同類だろうしね」 衣「衣はなにをしたらいい…?こんなあやふやな気持ちを…どうしたらいい…」 ?「さてね。悩めばいいんじゃないかい 衣「…」 ?「ま、答えがでないなぞなぞなんて無視してしまうのが一番さ」 衣「なら何故…」 ?「さぁ?こどもちゃんの曇った顔が見たかったから、かもしれないねぇ」 衣「こどもじゃない!衣だ!」 ?「まぁほどなくすべてが終わる。悩む時間もないかもしれない。 …どうするかは君次第だよ。」 衣「…」 ?「では良き死後の旅を」 ガチャ 【衣、死者スレ到着】
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503 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/29(日) 00 50 43 ID zW7NWgWE 神原「なんと、アーニャちゃんは向こうについたか」 紬「こっち側の人間だと思っていたけど…出番欲しさに尻尾を振っちゃったのね」 神原「何、彼女のことだ。きっとぬかりなくカメラは終始回しつづけるだろう」 紬「そうね。それに、こっちにも心強いサポーターについていただいたし」 キャスター「律ちゃんが頑張るならこっちを応援するのは当然よ♪」 神原「おぉ、ついにこちらにもサーヴァントの応援がついたのだな」 キャスター「うふふ…ダウン時の闘魂注入は任せなさい」ワキワキ 律「!」ゾクッ
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作者・ ◆NmPAP.ioi. 厨二設定オリジナルキャラ・バトルロワイアル 厨二設定オリジナルキャラ・バトルロワイアル本編SS目次・投下順 厨二設定オリジナルキャラ・バトルロワイアル参加者名簿 厨二設定オリジナルキャラ・バトルロワイアル参加者名簿(ネタバレ) 厨二設定オリジナルキャラ・バトルロワイアル死亡者リスト 厨二設定オリジナルキャラ・バトルロワイアルルール・マップ 厨二設定オリジナルキャラ・バトルロワイアル支給品一覧
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作者・◆VxAX.uhVsM氏 第六弾です。 これまでかつてないほどカオスになると思います。 1/19 リスタートしました DOLバトルロワイアル4thSS目次(未編集) DOLバトルロワイアル4th参加者名簿 DOLバトルロワイアル4th参加者名簿(ネタバレ) DOLバトルロワイアル4th死亡者リスト DOLバトルロワイアル4thルール・マップ
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前夜祭の黒騎士たち ◆0zvBiGoI0k バリバリと、皮が裂ける音がする。 ボリボリと、咀嚼の音が響く。 ゴキュゴキュと、嚥下の音が止まらない。 それは腹を空かせた獣の食事の時間。 果肉と油の塊と成り果てたトーストを獣肉のようにかぶりつき、生地を食い千切る。 フライパンで熱しただけの肉厚のベーコンを切らないままぱくり。本物の肉の味を楽しむ。 右手には泡立つ黄色の液体。ジョッキ満タンに注がれたそれを一気に喉に流し込む。 喉の奥が燃え上がる、久方ぶりの生の実感。肉も殺しもつまみにしてこそ酒は旨いとばかりに。 飲みこむ手間も惜しいのか、片手で器用に卵の殻を割り、焼きも煮もせず生で頂く。 観客の嫌悪の視線など気にも留めず、腹の底を埋めるためひっきりなしにかっ喰らう。 獣に礼儀作法など一切不要。下に肉片を撒き、小さな口を淫らに開けては閉め、噛んではしゃぶり、口元の汚れを正そうともしない。 今までの欠乏を埋めるように、これからの生を存分に愉しむために、ひたすらに貪り続ける。 杯を直に掲げ最後の一滴まで残さず飲み干し、ようやく食事は終わった。 ■■■■■ 「――――――ふぅ、喰った喰った。ようやくまとまなメシにありつけたぜ」 黙々と喰い荒していた獣、アリー・アル・サーシェスという少女はようやく人語を発する。 深紅のチャイナドレスに引かれた扇情的なスリットを惜しげなく広げ大股に座り、ソファにだらしなく体を預ける。 一足先に休憩がてら食事を取っていた俺と憂を見てか、サーシェスは思い出したように空腹を訴えた。 冷蔵庫から適当に食糧を持ち出して目の前で喰い始める事数分間、俺達は飢えた肉食獣のような食事光景を見せつけられることとなった。 親父臭く楊枝を咥える顔と散乱している残骸を見比べて、小さく溜息をつく。 ちなみに憂が作った料理には全く手を付けていない。 というより付ける余地をなくしていた。憂が。 元々少ない量だった上、残った分も憂が処理してしまったためサーシェスが口に入れる隙を与えていなかった。いとあはれ。 その憂は何をするでもなく、隣で同じくサーシェスの食事を眺めていた。 視線は鋭く、親の仇でも見るような目付きだった。 表から窺えるのは、敵だった女への拒絶と否定。 裏に潜むのは見えぬ何かへの、大きな怯えと恐れ。 終始、小さく体は震えていた。知らず掴まれていた手からは汗が溢れ血の気が失せていた。 サーシェスとの相性が良くないことは前からも知っている。それは正しいものだし、そうでなくては後々の布石でも支障をきたす。 これまでも嫌悪の態度を見せていたが、そこまでなら決して問題にするものでもなかった。 だが今までよりなお一層に露骨で過剰な状態。単なる敵意以外のものが含まれてるのは確実だ。 どうやら、自分の知らぬ間にこの2人の中で何か関わりが出来ていたらしい。当然、悪影響の方向で。 傭兵に女子高校生、自負できる程に最低の組み合わせであるが、この時ばかりはこの3人はチーム、命の共同体だ。 こんな劣悪な関係ではまとめて全滅する危険がある。連携の乱れは戦場では最大の命取りだ。 今更憂とサーシェスとの関係については修復不可能。ならば自分がその間に入ることでバランスを保つ他あるまい。 「―――さあてと、だ。腹も膨れたことだしここからは仕事の話といきましょうか」 そんな思考にあった俺の意識を、甲高くも野太い声が引き戻す。 目を上げた先にはあどけない顔をした少女。 だがその瞳に宿るのは飢えたる猛獣。 その心中に住まうのは、無数の危難を切り抜けてきた歴戦の傭兵。 求めるは戦火。対価もまた戦火。 焦げ付いた戦の匂いを忘れられないワイルドギース。 戦争屋アリー・アル・サーシェスとしての目で己を見据えていた。 「これからどうすんだい旦那。まさかとは思うがこのまま呑気に物見遊山とはいわねえよな?」 整った顔立ちを台無しにする下品な破顔。綺麗に揃えられた歯も心なしか犬歯に見える。 獰猛な顔の裏では冷静に、冷徹に雇用主を値踏みしている。 興を冷ませるような対応をすれば、即座にその牙はこの喉に喰らい付くだろう。 文字どおりに野獣のサーシェスに対し、慎重に思考を広げる。 「当然だ。ここからは次の段階に移る。いつまでものんびりしてる暇はない」 幸か不幸かはさておき―――多少なりとも情による関係で結びついてる憂とは違い、サーシェスとの関係は実にビジネスライクだ。 互いにメリットがあり、利益を得られるという一点のみで結託している契約関係にある。 雇い主と雇われの傭兵。そこに不確定な要素が入り込む余地はない。 俺はもちろん、サーシェスもまた余計な茶々を混ぜることはしない。 こちらにとって奴はひとつの戦力であり、奴にとって俺達は武器と戦場の提供者でしかないからだ。 利用価値がないとわかれば容易に切り捨てられるが、逆説に問えば価値がある間ならば一定に信頼が持てるのだ。 そして、契約の任期はこちらの采配一つで問われる。 そこは商売の世界と何ら変わりない。流通物が直接の生命か否かという点くらいだ。 「そりゃあ安心だ。それで、さしあたっては何をするんだ?」 「手に入るだけの戦力は集めた。これ以上ここの探索は徒労になるだろう。次はその運用法を考えていく。 ……そうだな、まずは情報の確認といこう」 廃ビルの調査は終え、その過程で紅蓮等の武装の確保はできた。現時点での最高の装備だろう。 次は集めたそれらの使い道を考えていく番となる。 それと、今のうちに自軍の置かれた状況の整理をしておきたい。 揃えた手駒の編成と的確に王手をかけるための戦略の確立。俺という駒が持てる能力の本領発揮だ。 僅かに溜めを作り、空気を引き締める。 感傷を捨て、感覚を置き去り、雑音を取り除く。思考を高速、並列、分割して望む未来を計算する。 「5回目の放送を越えて生き残った参加者は俺達を含めて12人。この殺し合いもいよいよ佳境に入った。 次に起きる大規模な戦闘が最終戦になる可能性が高い」 俺の言葉に憂は息を呑み、サーシェスが唇を吊り上げる。 冗談でも脅しでもなく、正真に次の戦いが最後になると思っている。 ここ以外でも戦闘は当然起こっているだろう。生き残り全員が一か所に集まり、大混戦になるのも十分あり得る事態だ。 その時のために、今ここで出来るだけの戦略を練っておくのが肝要だ。 突発的事態に対応し辛い己の欠点は熟知済み。幾度なく常識外の存在を目の当たりにしてきた分、より細かい分析が求められる。 「始めに現時点での生き残りの情報を纏める。つまり俺達3人を抜いて9人、 阿良々木暦、秋山澪、一方通行、天江衣、織田信長、グラハム・エーカー、枢木スザク、東横桃子、両儀式についてだ」 「………………………っ」 何名かの名前に対し―――もはや予想するまでもない―――小さく体を震わせた憂を無視したまま話を進める。 「―――まずこの中で味方に回ると断言できるのはスザクだけだ。なるべく早期に合流することが望ましい」 ナイトオブゼロに任命時から連れて来られたと裏付けが取れている以上、これは間違いない。 生身での身体能力もナイトメアの操縦技術も超級の域、戦略の幅を大いに広げられる。 次代の『ゼロ』。全ての咎を自分が背負った後の世界を託すためにも、何としても生きて還さなければならない存在だ。 「随分とソイツを買ってんだな。マブダチってやつかい?」 「当たらずとも、遠からずだな。強さについては直接体験したお前なら分かるだろう?」 俺とスザクとの間にある関係は、サーシェスはもちろん憂にも教えていない。 ある意味でこちらの弱みといえるものだ、不用意に情報を与える真似はできない。 「ああそりゃ納得だ。あん時ゃマジ死ぬかと思ったぜ。まあ実際殺されてんだけどなぁ!」 ぎゃははは、と。 宴会でかますジョークのように気軽に笑い飛ばすサーシェス。 だが、その裏にはドス黒い念が見え隠れしているのが見て取れる。 サーシェスからは、ギアスによりこれまでの会場での動きの大体を聞いている。 主な焦点は主催に関してと死亡から蘇生のあらましだったが、その中で元の肉体を死に至らしめたのがスザクだと判明している。 仮とはいえ自分を殺した相手をそうそう許せるとは思えない。 ましてやコイツは期限付きの日雇いだ。報復に来ることは十分考えられる。 「分かってるとは思うが妙な気を起こすなよ。契約はまだ施行中だろう」 「わーってるよ。報酬も先払いしてもらったんだ、その分キッチリ働くし裏切りもしねえさ」 釘を刺す忠告も、糠に打ち付けた感触で軽く流される。 暗に、『契約が切れ次第殺す』と宣告したような返答で。 正面からならばスザクが遅れを取るとは思えないが、乱戦の不意を突かれるようなことがあれば、万が一ということもある。 自分にはそれを制する膂力はない。だが手懐ける調教の鞭と手綱は一級品だ。 合流以降は、しっかりと握る必要があるだろう。 「……あれ。ルルーシュさん、式さんはどうしたんですか?あの人も味方ですよね?」 味方というキーワードで思い出したのか、少し前まで行動を共にしていた両儀式のことに触れる憂。 サーシェスの襲撃の折り、単独行動に出た澪を探すといったきり式とは音沙汰なしだ。 放送で名を呼ばれてない以上生きてはいるがその状況はようとして知れない。 持たせた通信機が壊れた、負傷して動けなくなっている、可能性は幾つも思い当たる。 だが自論で言えば……その線は薄い。 「―――式は、おそらく戻ってこないかもな」 「え?ど、どうしてですか……?」 震える声で憂が問う。 澪の裏切りを知らせた時よりは小さいが、それでも動揺は隠せないようだ。 「元々、俺達とはそりが合わなかったみたいだからな。 会話も殆どがデュオを通してのものだったし、他人と関わりを持ちたがらない性格なんだろう。 そのデュオも死んだと分かった今、ここに戻ってくる保証はない。通信機にも何度かかけたが今も連絡がない。 最悪、澪達の側へ付いてる可能性もある」 「そんな…………」 俺に関しては始めから信用されてなかったようだしな。と心中で吐きながら。 サーヴァントと渡り合える戦闘力は魅力だったが、腹の内どころか顔すら碌に見合わせない間柄ではいずれこうなると予想はしていた。 思えばあの時の発言から違和感があった。 明らかに他者との馴れ合いを好まなさそうな式が自ら澪の探索に出る。考えて見ればこれは大きな疑問。 澪と桃子と秘密裏に繋がっていたように、式も澪と少なからず関係を持っていたのかもしれない。 それが澪達と共謀していたことと同義とは言えないが、自主的にここに戻ってくる見積もりは低いと言わざるを得ない。 確実に敵とはいえないが、味方と呼ぶには信頼が足りない。そんな微妙な境界の立ち位置。 それならば障害の側と認識していた方が影響は少ないだろう。 「これこそお前とは無関係なことだ。何も気にすることはない」 「……………はい」 納得はしたが不安はある、といった表情で押し黙る憂。 式とは全くといっていいほど会話など交わしていないはずだが、顔に落ちた喰らい影は落とされたままだ。 今の憂にとって何かを失くす、自分の前からいなくなるということは禁忌に等しい事柄なのだろう。 姉への思いを失い軽くなった身は支柱のない家のように恐ろしく脆い。 何かに依存しなければ自己すら保てない、破綻と矛盾に絡まれた螺旋の心理。破滅の免れない空虚な器。 そうしたのはまぎれもなく、俺だ。 他ならぬ俺が彼女をそういう少女に仕立ててしまった。 その罪を受け止めてはいても、償うという選択肢は、きっと俺には許されないのだろう。 「一定以上に注意しておくべき人物には、阿良々木、澪、桃子、一方通行の4人が該当する。 といっても、4人の間では危険度にある程度の開きがある。 まず明確に敵対している桃子、それと行動を共にしているだろう澪とは対決は避けられそうにない。 一方通行は未知数な点が多いが、おくりびとで数回出て来たことから警戒はしておいて損はない」 「――――――――――――」 それに何の思いも抱くことなく、次の考察を進める。 今度は静かに、だがそれ故に顕著に大きな反応を見せる憂。やはりそれに構わず口を動かす。 「対策はあんのか?黒髪の嬢ちゃんはともかく消える女……ステルスだっけか?の方は厄介だぜ。 戦力比からも性質的にも、真正面から向かってくるなんてことはまずあり得ねえ。間違いなくドサクサに紛れて不意打ちしてくるぜ」 「確かにな。だが来ると分かってる奇襲が脅威になるか?やりようはいくらでもあるさ。 理想は逆にこちらから奇襲をかけることだな。桃子自身のスキルは低い、上手くやれば簡単に無力化できる。 澪に対しては簡単だ。『油断しないこと』これに尽きる。 窮鼠は猫をも噛むからな。それさえ忘れなければ問題ないだろう」 サーシェスと会話する傍ら、ちらりと横目で見やる。憂の面持ちは沈痛だ。やはり精神の消耗はかなり大きいとみえる。 今後の戦いのためにも休めたいが、まだ聞いておかねばならないことがある。 「憂、念のために聞いておく。今でも阿良々木暦を殺したいと思っているか?」 正直、既に俺にとっては阿良々木暦は排除対象とは言い難い男だ。 情報の行き違いと誤解から処理の標的として定めていたが、それから半日も経過してその意味は薄れつつある。 見た目と人物像からいって、阿良々木暦が単独で強者を屠るだけの力と知恵を持ってるとは考えづらい。 そしてこの局面で集団に属しているのなら、そこにスザクも加わっている目算は非常に高い。 であるのならば、自分との間の誤解も解けているのではないか。 スザクもここで対立して余計な軋轢を生む真似はしない筈。桃子も離反した今、和解とまではいかなくとも協調にまでは踏み入れる余地はある。 ならば、重要なのは個人的な執着を持つ憂だ。 彼女は果たして今も阿良々木暦に明確な殺意を抱いているのか――― 「?ありますよ?阿良々木さんはブチ殺すに決まってるじゃないですか!」 「―――――――――」 即答。あまりに早い回答だった。 さっきまで澪や式に大きく揺さぶられていたとは思えない。むしろ快活なくらい色のある声だ。 思わず呆気にとられる。 阿良々木暦と憂との因縁は、実のところあまり把握していない。 暴行を受けたというわけではなく、むしろ憂が阿良々木を襲い返り討ちにあったということくらいだ。 いったいどれだけの事をしでかせばこれだけの怒りと殺意を抱くのだろうか。 ……逆に言えば、思いを失ってなおそれだけ執着しているということなのだが。 執着といっても、解釈を返せばそれは一つの依存の形だ。 守るものを奪われた時、人は残された思いを憎悪へと転化させ生きる糧を得る。 殺すために生涯を費やす復讐者などが良い例ではないだろうか。自分もその一例だ。 憎悪にせよ執着にせよ、良し悪しは別にすれば、強い感情は生きる気力になる。 あるいはそれを転化させれば、遠くない破滅を約束された少女に救いの道を開くことが――― ■■■ERROR■■■ERROR■■■ERROR■■■ERROR■■■ERROR■■■ERROR■■■ERROR■■■ 警告、警鐘。 頭痛、暴動。 危険。危険。危険。 思考、遮断。閉鎖。脱線。断線。断層。隔離。 「ルルーシュさん?」 「―――そうか、わかった。お前の好きにするといい」 思考を打ち切れ。忘れろ。録音を消去しろ。 そんなことは、考える意味がないことだ。必要のないことだ。 今更……俺が彼女に何をしてやれるっていうんだ。 頭痛のせいで思考が散発しているのだろう。気を入れ直さなければならない。 無理やりに纏め上げ、脳を再稼働させて早々に話題をごまかし次に移る。 ■■■■■ 「天江衣は情報の限りでは麻雀以外では非力な少女でしかないそうだ。桃子とも切れた今、特別関わる必要性は薄いと見ておく。 グラハム・エーカーに関しては全くの情報なしだが……サーシェス、お前は知っているか」 「俺の世界じゃ名の知れたMSパイロットだそうだぜ。もっとも会ったことはねえし、俺が知る限りじゃ死んだか行方不明だかって話だけどな」 「ここまで来た以上、同姓同名ということはなさそうだな。モビルスーツがあれば引き寄せる餌にはなるか―――」 異なるルートで動いていたサーシェスを併せて情報の整理は滞りなく済んでいく。 大方の考察は出揃った。ここからが本番。この会議を始めた理由の大半。 今まで上げた人物は、危険度の差こそあれどれもある程度の対策というものが見えている。 未知数の部分も状況によって柔軟に対応するだけの余地もある。 だが、次の相手には特に入念に練る必要がある。 それだけの、最大限の警戒を以てして考える必要があると判断したまぎれない敵。 「織田信長。こいつが俺達が最も警戒すべき敵だ」 おくりびとで見た顔を想像し、仮想の敵を思い返す。 壮年に入った年頃、映像越しでも伝わる鬼の如き気迫。第六天魔王と後世に恐れられた通りの形相だった。 「こいつの情報自体は決して多くはないが、それでも間違いなく最大の障害として立ち塞がることになるだろう」 「へえ、根拠は?」 「簡単だ。少ない情報だけでも危険な要素が満載だからさ」 織田信長に関して集まっているマトリクスは確かに多くはない。だがその少ない情報でその戦力、性質が容易に窺い知れる。 サーヴァントと同等の力量の戦国武将。 凶行を繰り返し続けた明智光秀の上官。 直接対峙した式とデュオからの証言(一瞬だけとはいえサーシェスも含む)。 現在でも生き残っていることもよりその剛健さを裏付けている。しかもこれで最低限の推察なのだ。 過去のサーヴァント戦での経験から、常に想定以上の強さを誇っていると見なしても問題ない。 それを見積もれば、その強さは規格外としかいいようがない。 「戦国武将でも屈指の威名、バーサーカーと同等以上の扱いをしても過大にはならないはずだ」 そしてニホンの歴史を学べば必ず目にする知名度の高さ。 ……俺の知識が正しければ、歴史上の信長は常識にとらわれない戦法を軸にして成り上がった大名なのだが、今となってはどうでもいい。 「…………!」 「―――で、そいつに勝つ見込みはあんのかい旦那」 身震いする憂に、ここまでで一番の真剣な顔を見せるサーシェス。 憂にとっては、思いだしたくない恐怖の象徴であろう狂戦士を越える敵となれば、警戒と畏怖を抱いても無理もない。 サーシェスとしても信長は排除には相当手間取ると考えてるのだろう。傭兵の勘は遠目とはいえ直に見た威圧感というものを感じ取っている。 俺自身、バーサーカー以上の強さというものに予想がつかない。 だが。 「勝つさ。勝たなくてはならない。どんな相手だろうとな」 強大さ、正体、そんな要素はたいした問題ではない。 敵の手の内が見えないなど至極当然。ようはそれを叩き潰すだけの実力があるかどうかだ。 そしてルルーシュ・ヴィ・ブリタニアにとっての実力とは即ち権謀術数。 策を弄し術を携え、足を掬う戦略構築に他ならない。 実際勝算はある。一騎当千の勢いを持つバーサーカーを斃せたように、しかるべき手さえ取れば決して太刀打ちできない存在ではない。 バーサーカー戦時とは数の上では劣るが戦力比でいえばむしろ上昇している。勝利への方程式は組みつつある。 「俺の見た手では、戦国武将及びサーヴァントの戦闘力は高性能のナイトメア一機分と想定している。 俺達の戦力は紅蓮とリーオー。馬力はリーオーの方が上だが対象が人間大では狙いが付けにくいだろう。 よって前衛に憂に置き、後衛でサーシェスが援護射撃、俺が指揮を執る陣形を基本としていきたい。 紅蓮の性能なら決して見劣りしない筈だ」 憂の身に秘められた才能は芽を開き、操縦技術においても訓練を積んだ一般兵を上回る。紅蓮の性能も引き出せるだろう。 構築した戦略を解説して、横に座る憂に顔を向ける。 「当然、お前には大きな危険が付き纏うことになるが―――憂、できるか」 不安げに俺の顔色を窺う、子犬のような仕草。 戦う意志はあるか。命を懸ける覚悟はあるか。俺を信じてくれるか。 既に幾度なく行われた問い。それを再認識させることで、彼女の戦意を促す。 なんて、卑怯。選択肢なんて、とうの昔に奪ってしまったというのに。 「―――出来ます。大丈夫です。 ちゃんとやりますから。私が、ルルーシュさんを守りますから……」 予想通りの、都合のいい返事。分かり切っていた回答が耳に届く。 潤んだ瞳は俺から目を離さない。それが最大の信頼の証というように。 あなたを信じます。あなたを頼ります。あなたのために働きます。 必死に暗示を自己にかけ続けている。 「ああ、頼んだぞ」 「はい…………」 それを指摘することなく振る舞う。このまま騙し続けることが俺の役目だと戒めて。 せめてこの瞳だけからは目を逸らさず、真正面から受け止める。 欺こう。 演じさせてあげよう。 俺の紡ぐ優しい嘘に。 だって、彼女には。 もう、俺しかいないんだから。 ……いないのだろうか、本当に。 「2人の世界のところ悪いけどねえ、そろそろ作戦のまとめといかねえか?」 完全に蚊帳の外状態のサーシェスの声を受け咄嗟に離れるく憂。 何故だか、顔が赤い。涙をこらえているせいだろうか。 確かにこれ以上のフォローは無用か。話の路線を元に戻す。 「そうだな、今からすることはこの船の武装化だ。幾つか余った装備があるし、それを遠隔操作できるようにしておきたい」 戦いとなればこのベースは大きな的にしかならない。大型船舶ということに安心し切れないのは承知済みだ。 2人の戦いをサポートするためにももう一手欲しい。戦艦とはいかなくとも護衛レベルのものを備えおく。 「憂、装備の配置に手伝ってくれ。紅蓮の慣らしも兼ねて動かしておけ」 「はい。あ、でもルルーシュさん……」 従順に頷く憂だが、俺の横を見て少し戸惑う。 視線を追えば、赤い中華服に身を包んだ茶髪の少女。 どうやら、俺とサーシェスを残すことに不安があるらしい。 「気にするな、俺も後で来る。それにこいつには何もできないさ」 今はまだな、と心中で付け加える。サーシェスはそれに何も言わない。 気付いてないか、あるいは勘付いた上で黙しているのか。 憂はやや間を置いて、不承不承ながらも了解したように扉へ歩く。 だが出ていく前に振り返って一言。 「ルルーシュさんにヘンなことしたら、絶対に許しませんからね」 そんな、奇妙な台詞を捨て残して部屋を後にしていく。 姿が消え足音も聞こえなくなってから、堪え切れないという風にサーシェスが吹き出した。 「うらやましい限りだねえ、ぞっこんじゃねえかあの嬢ちゃん」 「あまり不用意にからかうな。連携が乱れては困るのはお前の方だぞ」 俺としてはより円滑に動けるようにコミュニケーションを取っているつもりなんだがねぇ……、と呟きながら足を組みかえ頬杖を突く。 色気よりも健康さが発露されている、瑞々しい小鹿のような腿を曝け出し、嘲るように声を投げかけられる。 年端もいかない少女の肉体に中年男性のような振る舞いはひどい倒錯感を覚えさせる。 ある意味でそれは誘惑だ。獲物を誘い仕留める肉食獣じみた姿勢だ。 「旦那こそ人のこと言えるか?あんだけベタ甘にされりゃあ、色々考えもするんじゃねえのか?」 「そう見えるか?」 …………………… しばし、沈黙。 サーシェスの顔はふっ、と。さっきとは毛色の違う冷笑を浮かべる。 「――――いいや。旦那はそんなタマじゃねえよ。アンタの腹(ソコ)は分かってるさ。 目的の為なら何だって、俺も嬢ちゃんも、てめえさえも躊躇無く差し出すだろうさ」 そういう所が気にいったんだぜ。両手を挙げてポーズを取りながらそう答える。 こいつは、自分が切り捨てられるということを勘定に入れた上で俺に従っている。普通に考えなければ狂ってるとしか言いようがない。 当然気狂いの妄言ではない。自分の札に手がかけられる直前に逆に出し抜く算段を立てている。 元々派遣扱いの雇用者、ここで離脱しても元の鞘に収まるだけ。何の問題もありはしない。 だがむしろ、このほうがいい。 今まで組んでいた相手とは馴れ合い過ぎた。その結果がこの無様でもある。 この傭兵との関係こそが、俺が慣れ親しんできた、俺に相応しい他人との間柄だ。 人を従え、隷属し、支配し続けて来たあの頃の自分。 このいつ背くとも知れない獣を傍に置くことで嘗ての自分を取り戻す。 これからの戦いに必要なのは、悪逆皇帝としての冷酷さ。 「さあ、休憩時間は終わりだ。ここからは休みなしと思え。一層働いてもらうぞ」 「はははっ望むところだねえ。んじゃ精一杯お仕事といきますか!」 景気づけとばかりに、手をかざす。 スリットを捲り露になる太腿にまき付かれた紫の布を振り回す。 すると棒はみるみる内に硬質化して、身の丈を越える棒となりサーシェスの肩に乗せられる。 流体金属製というその布は電流を帯びることで形を変える材質でできている。懐かしきホールからの戦果のひとつだ。 澪と俺の部屋に別個にして置いていた支給品の詰まったデイパックから、サーシェスが使える武器として渡したものだ。 これ以外にもまだ使える品が残されている。これと自販機を活用すればそれなりの防備を作れるだろう。 ■■■■■ 3つのデイパックを抱え前を進むサーシェスを見て、誰にも気取られぬ視界で思考を別のものに切り替える。 裏に潜む存在、リボンズ・アルマークという黒幕に関しての情報は殆ど得られていない。 直接の情報源はサーシェス一人だし、その本人から有用な手掛かりには辿り着けなかった。 ギアスの支配下での質問で沈黙を通したという事は、本当にサーシェスは何も知らないということだ。 今の俺同様、リボンズの私兵として動いてきたサーシェスでは容姿程度しか知るものはない。 一見手詰まりの現状であるが、それに反してこの殺し合いそのものに関しての手掛かりは各地に置かれていた。 会場内の地図。 ダモクレスの設計図。 そして廃ビルで手にした首輪の設計図。 つまり殺し合い抗するための手段は多数あるが、元締めであるリボンズ本人に関しては一切の情報がないのだ。 これの意味する所。単に俺達の殺し合いを観戦するがためでないのは明らかだ。 ネット麻雀やチェスと同じ要領だ。顔が見えなくとも出した手を見れば次の動きも読めてくる。その先の読み合いこそがボードゲームの真髄。 これまでに集めた断片を、一本の線に形作る。 (敵は相当の自信家。俺達が集められる程度の情報では自分の元へ辿り着かないと確信している。 その上で首輪の情報を流し俺達が自主的に脱出するように―――殺し合いが成り立たなくなるように仕向けている。 つまり優勝者の決定の是非は問わない。脱出して喜ぶ俺達を嵌めて嘲笑うためにしては手が込み過ぎている。 奴は一体何をしたい?俺達に何をさせたい?) しかし答えは出ない。数式を解くためのピースはあまりにも足りず、解答時間もリミットが近づいてきている。 焦りは禁物とはいえ時間オーバーでは話にならない。疑念は躊躇を生み、行動を遮らせる。 故に一端打ち切る。正しい答えに辿り着くには時を置くことも重要だ。熱くなり過ぎた考えを冷まし、柔軟な思考を取り戻させる。 皮算用ばかりで目前の戦いを疎かにしては話にならない。今はこの準備を進めておく方を優先する。 だが、必ず。何としてもその影を暴いて見せる。その玉座から引き摺り下ろして見せる。 リボンズ・アルマーク。 お前は誰かを撃つと同時に自分も撃たれる覚悟があるか。 人を撃つということの重みと、それに伴う痛みが理解できてるか。 ないのだとしたら、俺がそれを理解させてやる。 だから、待ってるがいい。 【D-1 廃ビル前(ホバーベース内)/二日目/朝】 【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュR2】 [状態]:疲労(中)、右腕骨折、頭部に裂傷(処置済み) [服装]:アッシュフォード学園男子制服@コードギアス 、頭部の包帯 [装備]:ニードルガン@コードギアス、ククリナイフ@現実、イヤホン@現地制作、 [道具]:基本支給品一式、2億200万ペリカ、盗聴機×7、発信機×5@現地制作、通信機×5@コードギアス、不明支給品(0~1) 、 単三電池×大量@現実、和泉守兼定@現実、フェイファー・ツェリザカ(弾数2/5)@現実、15.24mm専用予備弾×60@現実、 USBメモリ(会場地図)@現実(現地調達)、首USBメモリ(ダモクレス設計図)@現実(現地調達) BMC RR1200@コードギアス 反逆のルルーシュR2) 、輪の詳細設計図@現地調達、オートマトンx3@機動戦士ガンダム00 [思考] 基本:枢木スザクは何としても生還させる。 0:戦闘の準備をする。 1:首輪を取り外すためにもう少し情報が必要。 2:殺しも厭わない。憂、スザク以外は敵=駒。 3:スザクと合流したい。 4:サーシェスを上手く利用する。 5:主催の目的を探る。 [備考] ※首輪の解除方法を知りました(用意次第で解除可能) 【平沢憂@けいおん!】 [状態]:拳に傷、重みを消失 [服装]:アシュフォード学園女子制服 [装備]:ギミックヨーヨー@ガンソード、騎英の手綱@Fate/stay night+おもし蟹@化物語、拳の包帯 S W M10 “ミリタリー&ポリス”(4/6)、 発信機@現地制作、通信機@コードギアス、遠坂凛の魔力入り宝石@Fate/stay night×7個(in腰巾着) [道具]:基本支給品一式、CDプレイヤー型受信端末、リモコン、日記(羽ペン付き)@現実、カメオ@ガン×ソード 鉈@現実、燭台切光忠@現実、忍びの緊急脱出装置@戦国BASARA×1、38spl弾×44、さわ子のコスプレセット@けいおん! 紅蓮弐式の起動キー@コードギアス 反逆のルルーシュR2 、アシュフォード学園女子制服 [機動兵器]: 紅蓮弐式 [思考] 基本:ルルーシュとバンドを組みたい。阿良々木さんはもう絶対殺す。 1:辛いことは考えない、ルルーシュさんを信じる。 2:ルルーシュさんの作戦、言う事は聞く。 3:阿良々木さんはブチ殺してお姉ちゃんのギー太を返して貰う。 4:東横桃子は敵と見なす。 5:思いを捨てた事への無自覚な後悔。お姉ちゃんは私の――。 6:澪への未練 【アリー・アル・サーシェス@機動戦士ガンダムOO】 [状態]:左頬に湿布、左腕の骨に罅、妹達(シスターズ)に転身、 右腹部に傷(治療済み)、 [服装]:チャイナドレス(パンツはいてない)、首輪、ファサリナの三節棍@ガン×ソード(太ももに巻き付けてる) [装備]:コルトガバメント(6/7)@現実、予備マガジン×1、 [道具]:基本支給品一式、特殊デバイス、救急セット、399万ペリカ、接着式投擲爆弾×2@機動戦士ガンダム00 COLT M16A1/M203(突撃銃・グレネードランチャー/(20/20)(0/1/)発/予備40・9発)@現実 ヨロイ・KMF・モビルスーツ各種完全型マニュアル、常盤台の制服@とある魔術の禁書目録 、 [機動兵器] :OZ-06MS リーオー [思考] 基本:雇い主の意向の通りに働き、この戦争を勝ち上がる。 1:ひとまずこの集団に属して立ち回る。 2:好きなように動く。 3:迂闊に他の参加者と接触はしない方がいいかもしれない。 4:式、スザクには慎重に対処したい。余裕があれば暦に接触してみたい。 5:影の薄い女にはきっちりとお礼をする。 【ホバーベース】 現在はD-1廃ビルに停止中 ※以下の荷物を3人で運んでいます。 基本支給品一式、歩く教会@とある魔術の禁書目録、手紙×2、遺書、カギ爪@ガン×ソード モデルガン@現実、ミサイル×2発@コードギアス、“夜叉”の面@現実、揚陸艇のミサイル発射管2発×1機 ジャージ(上下黒)、皇帝ルルーシュの衣装(マント無し)@コードギアス、ゼロの仮面とマント@コードギアス、 カセットコンロ、 混ぜるな危険と書かれた風呂用洗剤×大量、ダイバーセット、医薬品・食料品・雑貨など多数@現実 基本支給品一式×6、ゼロの剣@コードギアス、ゼロの仮面@コードギアス、果物ナイフ@現実(現地調達)、ジャンケンカード×5(グーチョキパー混合) 蒼崎橙子の瓶詰め生首@空の境界、刀身が折れた雷切 @現実、遠坂凛の魔力入り宝石@Fate/stay night×3個、薔薇の入浴剤@現実 桜が丘高校女子制服(憂のもの)@けいおん!、メイド服@けいおん! 、ポンチョのようなマント@オリジナル(現地調達) 桃太郎の絵本@とある魔術の禁書目録、2ぶんの1かいしんだねこ@咲-Saki-、シアン化カリウム入りスティックシュガー×5 皇帝ルルーシュのマント、洗濯紐包帯と消毒液@逆境無頼カイジ、阿良々木暦のMTB@化物語、“泥眼”の面@ ※冷蔵庫内に大量の食糧が入っています。結構な量をサーシェスが食い散らかしました。 ※下記の機動兵器が格納されています。 [―――]:RPI-13サザーランド 装備:スラッシュハーケン、アサルトライフル、メーザーバイブレーションソード [平沢憂用]:紅蓮弐式 装備:輻射波動機構、呂号乙型特斬刀(特殊鍛造合金製ナイフ)、飛燕爪牙(スラッシュハーケン)×1 [アリー・アル・サーシェス用]:OZ-06MS リーオー 装備:ビームサーベル(リーオー用)×2、シールド(リーオー用)、ビームライフル(リーオー用) 時系列順で読む Back I hope so... Next わたしとあなたは友達じゃないけど(前編) 投下順で読む Back I hope so... Next わたしとあなたは友達じゃないけど(前編) 288 優&愛(後編) ルルーシュ・ランペルーシ [[]] 288 優&愛(後編) 平沢憂 [[]] 288 優&愛(後編) アリー・アル・サーシェス [[]]
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戦場の絆 ◆kALKGDcAIk ヒイロは敵機体を見て僅かに驚きが浮かべた。 ファサリナの搭乗しているMS。 その姿は自分のよく知るガンダムによく似ていた。 だが、あの様なガンダム。いやMSをヒイロは見たこともなかった。 機体の名はガンダムヴァーチェ。 鈍重なイメージを持たせる分厚い装甲。 巨大なキャノン砲を肩部に装着し、拠点攻略などに重点を置かれた機体だ。 サウダーデは上空へ飛び上がった。ヒイロは敵機の見た目から素早い動きは苦手だと考え、空中からの射撃が有利だと判断したのだ。 飛行して相手に狙いを付けられないようにしながら、サウダーデの武装の一つである重粒子弾ライフルの引き金を引く。 重粒子弾の雨がヴァーチェに襲いかかった。 轟音と共に巻き添えになった周囲の半壊したビルは粉々に砕け散り、土煙を生み出す。 一見、ヒイロ有利の展開。しかし、ヒイロの内心は自身に失望していた。 サウダーデのスペックを生かし、空中を高速移動しつつの射撃。 いつもなら何の問題もない動作であった。だが、ヴァーチェに命中させられたのは精々半分。 本来の愛機であるウイングガンダム。いやMSならば、このようなミスは無かっただろう。 ただの機体ごとのクセ程度なら、ヒイロほどの実力なら問題なく動かせた。 ヨロイという世界も、技術も、設計理念も異なる機体。 たとえ慣れ親しんだコクピットに座っていようと、MSとヨロイではヒイロの想像以上に違いが存在したのだ。 「早い殿方は...。嫌われてしまいますわよ」 ファサリナの妖艶な声と共に、土煙の中から破壊の光が飛び出す。 その反撃はヒイロには十分予想範囲内の事であり、回避は容易い。 だが、土煙が晴れたとき、ヴァーチェは一切の傷を負ってはいない。 そちらの事実がヒイロに僅かながら驚きを与えた。 いくら全弾命中させられなかったとしても、多少は傷をつけられてもおかしくない。 ヒイロは落ち着いてビーム砲のトリガーを引いた。 今度はミスなどない。的確な射撃でヴァーチェに破壊の雨が降り注いだ。 だが、それもヴァーチェに届くことは無い。 今度はヒイロの目にもその理由がはっきりと映った。 ファサリナの妖艶な声がコクピットに響く。 「もっと...、もっと激しく攻めてもいいのよ」 ヴァーチェを覆う緑色の粒子にビームは全て防がれていた。 GNフィールド。 圧縮したGN粒子を展開することで強固な防御フィールドを形成する武装である。 その防御力は実体弾はもちろんビーム兵器すら防ぐほど。 「溜まってるものは出しても構わないですわ。こんな風に...」 「くっ……!」 サウダーデを遥かに上回る大出力のビーム砲。 ヴァーチェの真髄はその圧倒的な防御力。そして、そこからの砲撃だ。 ヴァーチェのGNキャノンは戦艦を撃沈するほどの威力を誇る。 直撃すればサウダーデでも一撃で落とされる可能性があった。 防御と火力ではヴァーチェが相手に勝り、機動力ではサウダーデが相手を大きく上回る。 故にお互い攻めあぐねるのが現状だ。 サウダーデはGNフィールドを破ることが出来ず、ヴァーチェには高速で飛び回るサウダーデを捉えることが出来ない。 これが本来のパイロットが搭乗していたならば、お互い状況を破る突破口を見出すことも可能だったはずだ。 サウダーデ本来のパイロットであるミハエル・ギャレットなら、電磁シールドを用いてビームを防いでの接近戦に持ち込めるだろう。 ヴァーチェ本来のパイロットであるティエリア・アーデなら、GNバズーカの火力をもっと活かしての強引な攻めも可能だろう。 機体のスペックだけ理解出来ても、それを最大限に引き出し、応用することは難しい。 他世界の機体に不慣れであること。それが拮抗を生み出す最大の原因となっていた。 この状況下で拮抗を破る手段は少ない。 一番良いのは機体に慣れ、その性能を十分に引き出せるようになることだ。 そして、自らの力量を十分に発揮して相手に打ち勝つ。 事実。二人とも慣れてきたのか射撃の精度は上昇し続けている。 だが、流れを変えるにはまだ足りないのだ。 膠着を打開する術を模索するヒイロの脳裏に一つの選択肢が浮かんだ。 ヒイロがデータを見た時には気がついたサウダーデの機能。 それがこのお互い攻めあぐねている状況を変える手段として有効であると。 「えっ!?」 余裕に満ちていたファサリナの声に初めて驚きが混じる。 サウダーデが武器形態である銃剣へと変形し、突っ込んできたのだ。 オリジナル7であるファサリナはサウダーデの武器形態への変形能力を重々承知している。 しかし彼、ヒイロ・ユイはヨロイをこのシュミレーターで初めて乗ったのだ。 たとえその機能を知っていたしても、ヨロイに慣れていない彼が変形して突っ込むとは予想もしていなかった。 敵の射撃の中を武器形態で突撃することは、猛火に身を晒すようなもの。 その危険性はヒイロなら十分承知のはず。 ファサリナは知らない。 ヒイロの愛機。ウイングガンダムにも武器変形に似たように機能があることを。 バード形態。高速移動用の巡航形態である。 人形から変形しての高速飛行はヒイロにとって慣れ親しんだもの。 銃剣という形態からこの武器形態は突撃にも耐えられる。 この拮抗を打開するに多少の強引さは不可避であるとヒイロは判断したのだ。 その判断は正解だった。 高速で接近するサウダーデに対し、驚きによりファサリナの判断が遅れたこともあって、対応出来ない。 天翔ける銃剣がヴァーチェの胸部を捉えた。 巨大な激突音が響く。GNフィールドは衝撃まで無効化は出来ないのだ。 ヴァーチェはその衝撃で大きく吹き飛ばされた。 「あら、意外と強引なところもあるのですね...」 ファサリナが態勢を立て直そうとした時には既にサウダーデは人型に戻り、その銃口はヴァーチェのすぐ近くにあった。 「この距離ならバリアは張れないな」 ヒイロは勝利を確信する。 小回りの効かない巨大な機体ではこの状況を脱するのは不可能だと。 だが、絶体絶命の危機にもファサリナは妖しく微笑んだ。 「でも、そんなに乱暴ですと...、花びらを散らしてしまいますわ」 その瞬間、ヴァーチェの装甲が弾け飛ぶ。 「何ッ!?」 ヴァーチェの予想外のアクションにヒイロはとっさに後ろに飛ぶ。 幸い、弾け飛ぶ装甲の勢いは弱い。問題なく距離をとることは出来た。 ヴァーチェは先程までは想像も出来なかった姿を晒していた。 鈍重な装甲を脱ぎ捨てた下には、先ほどとは打って変わって細身の体型。 頭部から伸びる赤いケーブルはまるで女性の髪の様。 それは細身の手足と相まってどこか女性的な印象を与える。 「装甲をパージさせたか」 「ガンダムナドレ...。どうやら、こちらの方が私に合うみたいですね」 サウダーデの銃口から牽制の意味を含めた重粒子弾が打ち出される。 だがそんなモノはもう、ナドレの戦いのステージを飾る一要素に過ぎない。 その姿は鈍い蛹から脱皮した蝶のごとく。 華麗なステップで重粒子弾の雨を掻い潜る。 先程は肩部のキャノン砲として用いていたGNキャノンを手持ち武器として隙を見つけては撃ち返す。 もはや戦況は互角。 飛び交う光弾。舞い上がる粉塵。 僅かに残っていたビルの残骸すら砕け散り、互いを遮るものなど何もない。 一対一。正々堂々とした戦いの場。 ヒイロの胸にほんの僅かだが、熱いものがこみ上げていた。 それは本人すら気付いていない。 ヴァーチャルなこの戦いで。いや、ヴァーチャルだからこそ。 作戦や目的など意識せず、ただ相手との技量を競う戦い。 普段とは違った戦いへの意識だった。 一瞬だがヴァーチェの動きが止まった。 当然、ヒイロはその隙を見逃さずに距離を詰める。そしてそのまま銃剣で斬りかかる。 だが、その刃がヴァーチェに届くことは無かった。 コクピットの計器から光が消えていく。 サウダーデはもう動かなかった。 モニターには戦いの結果を表す言葉が並ぶ。 YOU WINと。 ◇◇◇◇◇ 「降参です...。私の負けですわ」 「どういうつもりだ。あのままなら勝負は分からなかったはずだ」 シュミレーターから出てきたファサリナに、ヒイロは言い寄った。 ファサリナの紅く染まった頬。荒い呼吸。 普通の男性なら劣情を催すのも無理のない姿だ。 男を惑わす女性の色香が周囲に漂う。 しかしそんなこと、ヒイロにとってはどうでもいいことだった。 「ヒイロの実力は十分知ることが出来ました...。これ以上は時間の無駄です」 僅かに憂いを秘めた表情でファサリナは語る。 「それに...、いくらシュミレーターでもあのヨロイを破壊する気持ちにはなれません...」 サウダーデに対して、ファサリナが一体どのような思いを抱いているのか、ヒイロは知らない。 ただ、その顔を見てそれ以上追求する気は無くなった。 「……もういい。だが勝負は勝負だ。最初の約束通り、B-2に向かう」 ヒイロが心に抱く微妙な感情を受け入れてくれた事を感じ取ったのだろう。ファサリナの表情は既にいつも通りになっていた。 「ええ勿論です」 ヒイロはふと、シュミレーターの脇に小さな冊子が置いてあることに気がついた。 シュミレーターの解説冊子だった。 パラパラと捲った所、使用できる機体のスペックなどについて記載されているようだ。 「どうかしましたか?」 ヒイロはその内の一冊をバックの中に突っ込んだ。 「何でもない。行くぞ」 【C-3/憩いの館(地下ゲーセン内)/1日目/午前】 【ファサリナ@ガン×ソード】 [状態]:健康 [服装]:自前の服 [装備]:ゲイボルグ@Fate/stay night [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品2個(確認済み) M67破片手榴弾x*********@現実(ヒイロとはんぶんこした) 軽音部のラジカセ@けいおん(こっそりデイバックに入れた) [思考] 基本:ヒイロと協力して主催者を打倒する、それが無理だと判断した場合殺し合いに乗る 0:B-2の間欠泉へ向かう 1:ヒイロと共に行動する 2:間欠泉を調べ終わったら、早く新しい同士を集めたい 3:「カギ爪の男」が本当に死んだのかを確かめる 4:新たな同志が集まるまではなるべく単独行動は避けたい 5:明確な危険人物の排除。戦力にならない人間の間引き。無理はしない。 6:ゼロを名乗る危険人物の排除 [備考] ※21話「空に願いを、地に平和を」のヴァン戦後より参戦。 ※トレーズ、ゼクスを危険人物として、デュオ、五飛を協力が可能かもしれぬ人物として認識しています ※ヒイロを他の惑星から来た人物と考えており、主催者はそれが可能な程の技術を持つと警戒(恐怖)しています ※同志の死に疑念を抱いていますが、ほとんど死んだものとして行動しています ※「ふわふわ時間」を歌っている人や演奏している人に興味を持っています ※ラジカセの中にはテープが入っています(A面は『ふわふわ時間』B面は不明) 【ヒイロ・ユイ@新機動戦記ガンダムW】 [状態]:左肩に銃創(治療済み) [服装]:普段着(Tシャツに半ズボン) [装備]:基本支給品一式 コルト ガバメント(自動銃/2/7発/予備7x5発)@現実、M67破片手榴弾x*********@現実(ファサリナとはんぶんこした) [道具]:B-2と記された小さな紙切れ@現実 『ガンダムVSガンダムVSヨロイVSナイトメアフレーム~戦場の絆~』解説冊子 [思考] 基本:主催側の技術を奪い、反撃する 0:B-2の間欠泉へ向かう 1:ゼロを名乗る危険人物の排除 2:今のところはファサリナと協力する 3:リリーナ…… 4:人を生き返らせる方法…… 5:ユーフェミアは…… [備考] ※参戦時期は未定。少なくとも37話「ゼロ対エピオン」の最後以降。 ※D-1エリアにおいて数度大きな爆発が起こりました。 ※ヴァンを同志の敵と認識しています ※ファサリナの言う異星云々の話に少し信憑性を感じ始めています。 ※ファサリナのことは主催に対抗する協力者として認識しています。 ※それと同時に、殺し合いに乗りうる人物として警戒もしています。 【『ガンダムVSガンダムVSヨロイVSナイトメアフレーム~戦場の絆~』解説冊子@オリジナル】 憩いの館、地下ゲームセンターにおいてあったシュミレーターの解説冊子。 シュミレーターにて使用できるMS、ヨロイ、ナイトメアフレームのスペックや武装などが記載されている。 なお、解説冊子は地下ゲームセンターに複数置いてある。 記載されている機体の種類や機体数については後の書き手さんにお任せします。 時系列順で読む Back 試練Next Turn Next 幸村ああああああああああああああっ!!(前編) 投下順で読む Back みんな! 丸太は持ったか!! Next 幸村ああああああああああああああっ!!(前編) 108 機械人形の館 ヒイロ・ユイ 151 思春期を殺した少年の翼 108 機械人形の館 ファサリナ 151 思春期を殺した少年の翼